小林製薬が、大株主からの要求を退け、前会長らを提訴しない方針を固めたことが明らかになったと日本経済新聞が報じた。この決定は、紅麹原料を含むサプリメントによる健康被害問題に関連している。
日本経済新聞の報道によると、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントが、小林一雅前会長らを提訴するよう小林製薬に求めていた。オアシス・マネジメントは、紅麹サプリメントの健康被害問題で会社に損害を与えたとして、前会長らの責任を追及しようとしていた。
小林製薬は1月20日にもこの決定を正式に発表する予定だという。会社法の規定により、株主からの請求を受けた企業が60日以内に提訴しない場合、株主は株主代表訴訟を起こすことができる。そのため、オアシス・マネジメントは1月下旬に株主代表訴訟を提起することができる。
小林製薬は自社のウェブサイト上で「一部報道について」として次の通りお知らせを掲載している。
「本日、一部報道機関において、当社株主から受けております提訴請求に対する当社の対応(以下『本件』という)について報道がありましたが、これは当社が発表したものではございません。なお、本件については、今後、開示すべき事項を決定した場合は、速やかに公表いたします」
この問題の背景には、小林製薬の紅麹サプリメントによる健康被害がある。2023年に発覚したこの問題で、小林製薬は製品の回収費用などで100億円を超える特別損失を計上したとされる。オアシス・マネジメントは小林製薬の株式を7.54%保有しており、前会長ら当時の経営陣と社外取締役の計7人に対し、約100億円の損害賠償を求めていた。
小林製薬の決定は、企業の経営判断と株主の権利の間のバランスを示す事例として注目している。今後、オアシス・マネジメントが実際に株主代表訴訟を起こすかどうか、業界関係者の注目を集めている。
オアシス・マネジメントは、2024年9月時点で小林製薬の株式を大量保有していることが報じられている。同社は、2002年にセス・フィッシャー氏により設立した香港を拠点とする投資ファンドである。「物言う株主」として知られ、主に割安で放置されている企業を対象としている。これまでに多くの日本企業の株式を保有し、積極的に経営改善や企業価値向上のための提案を行ってきた。
提訴を求める権限を持つ理由
オアシス・マネジメントは小林製薬の株式を7.54%保有する大株主であり、6か月以上前から引き続き株式を保有している。会社法では、総株主の議決権の3%以上の株式を6か月以上保有する株主に対し、会社に対して株主総会の招集を請求する権利を認めている。この規定に基づき、オアシス・マネジメントは小林製薬に対して、紅麹サプリメントによる健康被害問題で会社に損害を与えたとして、前会長らへの提訴を求める権利を有している。
さらに、会社法では株主が一定の要件を満たす場合、会社が本来行うべき権限を行使する権利が認められている。これは少数株主権と呼ばれ、オアシス・マネジメントの株式保有比率はこの要件を満たしている。
このように、オアシス・マネジメントは大株主としての地位と会社法の規定に基づいて、小林製薬に対して提訴を求める権限を有している。
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