中国共産党(中共)統計局は1月17日、2024年の中国のGDP成長率が5%を達成したと発表した。年間のGDPは134.9兆人民元で、前年比5%増とされ、政府目標を達成した形だ。都市部調査失業率の平均値は5.1%、31の大都市では5%と報告された。また、企業の週平均労働時間は49時間、2024年末の人口は14億828万人で、前年比139万人減少した。
一見すると安定成長を示すデータだが、市場や民衆の実感は大きく異なっている。この数字の背後には何が隠されているのだろうか?
国際通貨基金(IMF)の元中国局長であり、現在はコーネル大学教授であるエスマワール・プラサド氏は、2024年の成長率目標達成について「国内需要の低迷、持続的なデフレ圧力、不振の不動産市場や株式市場を考慮すると、目標達成が疑わしいようだ」と述べた。
また、フランスの金融大手ソシエテ・ジェネラルのチーフエコノミスト(アジア太平洋地域)であるアリシア・ガルシア=ヘレロ氏はロイターに、「世界の投資家たちは、中国の経済成長率が5%に達したからといって、中国への投資を決断するだろうか? その答えは『いいえ』だ」と語った。
海外投資の大幅減少と経済の課題
中共商務部の最新データによると、2024年1月から12月における実際の外資利用額は8262.5億元で、前年同期比27.1%減少した。このデータは、多くの外資が中国市場から撤退しつつある現状を示している。
中国の著名な経済学者・高善文氏はかつてSNSで、中国の過去3年間のGDP成長率が過大評価されていると指摘し、今後3~5年の成長率は5%を下回る可能性が高いと述べた。ただし、高氏は「私たちは皆、公式データが常に5%前後で発表されることを知っている」とも述べた。この投稿は既に削除された。
不動産市場の低迷と若年層の失業率
長期的に中国経済を苦しめている不動産市場は、2024年も低迷が続いた。統計局のデータによると、2024年の不動産開発投資総額は10兆2800億元で、前年同期比10.6%減少。特に住宅投資は7兆6040億元で10.5%減少した。商品住宅の販売在庫は10.6%増加し、不動産市場全体の需要低迷と投資信頼の欠如が浮き彫りになっている。
さらに、公式データでは、2024年7月時点で16~24歳の都市部若年層失業率は19.9%に達した。2025年には新卒者数が1222万人と前年比43万人増加する見込みだが、経済の低迷により新たな雇用の創出が難しい状況が続いている。
経済の実感と社会の不安
一方で、人口の高齢化に伴う年金問題は日に日に深刻化している。地方政府は公然と年金削減を表明してはいないものの、若者に対して積極的に社会保険料を納めるよう求め、資金の流動性を維持しようとしている。しかし、失業中の若者たちはそもそも基本的な収入すらない状況であり、自分自身の年金をどうやって納めることができるのだろうか。このような悪循環は、社会的な矛盾をさらに深刻化させる要因となっている。
経済の不安定さは弱者層だけでなく、かつて高収入だった人々にまで影響を及ぼしている。多くの人々が困難な状況に直面しており、これまでの安定した生活を維持することが難しくなっている。
北京の自動化サービス企業で働く王さんは、2024年の収入が16%減少したと語った。会社では既に複数回のリストラが実施され、さらなる人員削減が計画されているという。王さんは「公式発表される経済データは、私たちの実感とはかけ離れている」と述べた。
また、北京の投資銀行で働く25歳の張さんは「2024年は経済が下り坂に入った年だった」と話し、自身も2度の給与減額を受け、30%の収入減となったことを明かした。彼女の周囲では、すでに7~8人の同僚が失業しており、職場全体が不安に包まれていると語った。
ドイツのメルカトル中国研究所のチーフエコノミストであるマックス・J・ゼングレイン氏は、2025年の中国経済について「大幅な回復を期待するのは難しい」と述べた。また、アメリカが対中貿易政策をさらに強硬にする可能性が高いことも、中国経済の見通しを不透明にしている。
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