セキュリティ・クリアランス制度 運用基準最終案まとまる

2025/01/23
更新: 2025/01/23

政府は、経済安全保障上の重要情報へのアクセスを信頼性が確認された者に限定する「セキュリティ・クリアランス(適性評価)」制度の運用基準の最終案を、1月22日に開かれた有識者会議でまとめた。この制度は、2024年5月に成立した「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」に基づき、2025年5月の施行を予定している。

セキュリティ・クリアランスは、政府が保有する安全保障上重要な情報にアクセスする政府職員や民間人に対し事前に調査を行い、信頼性を確認した上でアクセスを認める制度。保護の対象となる情報を「重要経済安保情報」として指定する。これにより、国家規模の経済プロジェクトや安全保障に関わる情報が適切に管理される仕組みを構築する。

中国共産党による浸透工作やスパイ活動が国際社会で深刻化し、日本国内でもこれらの脅威が問題視されるようになった。こうした状況を受け、政府はセキュリティ・クリアランス制度を導入し、より包括的な情報保全体制を構築することを決定した。

この制度では、本人の同意を前提に以下の個人情報を調査する。

  • 渡航歴
  • 国籍、学歴、職歴
  • 精神疾患の治療歴(過去10年以内)
  • 飲酒に関するトラブルの有無
  • 家賃の滞納履歴
  • その他、信用に関わる情報

これによって、対象者が国家安全保障上重要な情報にアクセスする上で適切かどうかを判断する。

この調査は、重要情報の漏洩リスクを最小限に抑えることを目的としている。一方で、背景調査が個人のプライバシーが侵害される懸念も指摘されている。政府は、調査の実施にあたって以下を徹底するとしている。

  • 本人の同意を前提とする
  • 基本的人権の尊重
  • 調査結果の目的外利用の禁止
  • 透明性の確保

パブリックコメントの実施

政府は、制度の運用基準案に関して2024年11月28日から12月27日までパブリックコメントを実施した。この意見募集では国民の懸念や提案を反映し、制度の透明性確保と実効性向上を目指している。近く最終案を閣議決定し、法施行に向けた準備を進める。

石破茂首相はセキュリティー・クリアランスについて「わが国を取り巻く厳しい国際情勢に対処していく上で非常に重要だ」と強調した。制度施行後は、情報管理の透明性と安全性が強化されることが期待されるが、個人の権利やプライバシーとのバランスが問われる課題を含んでいる。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。