カナダ政府、TikTokを通じた影響力工作に警戒 外国干渉委員会で報告

2025/01/23
更新: 2025/01/23

カナダの外国干渉委員会に出席した政府関係者は、中国共産党(中共)がTikTokを通じて若者                                                                                                                                                                                               をターゲットにした情報工作を行い、西側諸国の将来のリーダーに影響を与える長期的な戦略を進めている可能性があると警告した。

カナダ枢密院事務局(PCO)の安全保障・情報秘書処(S&I)の補佐官ナビ・エルデブス(Nabih Eldebs)氏は、カナダ外国干渉委員会(Foreign Interference Commission)での証言で、多くの若者がソーシャルメディアの主要な利用者であることを指摘した。これにより、敵対勢力がこの層に直接接触し、ソーシャルメディアを通じて情報を伝えたり、交流することが可能になっているという。

同氏の観察がまとめられた報告書では、「SNSプラットフォームの急増は、敵対者が情報環境を形成する方法や若者と関わる方法に影響を与えている」と述べている。

エルデブス氏は特に、TikTokのようなツールについて言及し、同プラットフォームが中国共産党による規制や影響を受けていることから、カナダの若者に影響を与える成熟した手段となっていると述べた。

報告書では、カナダ首相府のインテリジェンスメモに基づき、中共が西側諸国の将来のリーダーに影響を与えるため、若者を標的にした長期戦略を進めていると述べられている。特に、ティーンエイジャーや若年層はTikTokを「偏りのないニュース」の主要な情報源として依存しているため、こうした層がプロパガンダや虚偽情報に最も影響を受けやすいとされている。

エルデブス氏や他の首相府情報担当幹部は、2023年夏に委員会の弁護士による非公開インタビューに応じた。カナダ政府は2023年9月、外国勢力による干渉の可能性を調査する目的で外国干渉委員会を設立し、2019年および2021年の連邦選挙の信頼性を確認することを目指している。

カナダ政府のTikTok対策とその背景

2023年11月6日、カナダ政府は「TikTokの親会社である中国企業バイトダンスが国家安全保障上のリスクを抱えている」として、TikTokカナダに対し事業停止を命じた。この懸念は、2017年に制定された中国の「国家情報法」に基づいており、同法は中国国内外の企業や個人に対して情報収集や政府への協力を義務付けている。

TikTokのユーザーデータがバイトダンスを通じて中共政府にアクセスされる可能性について、2023年10月、TikTokアメリカのプライバシー・公共政策責任者デビッド・リーバー氏がカナダ議会倫理委員会で証言している。

また、カナダ安全情報局のダニエル・ロジャース局長は、同年12月に「TikTokのようなSNSから収集されるビッグデータが中国の外国干渉活動に利用されている」と議会に警告した。

オタワは2023年2月、TikTokを政府支給のモバイル端末で使用することを禁止。カナダ政府の情報長官によるアプリのリスク評価で「プライバシーとセキュリティにおいて許容できないリスクがある」と判断されたためだった。

TikTok以外にも広がる懸念

中共政府は他のSNSを通じても外国に干渉し、虚偽情報を拡散している。2024年に入っても、中国がSNSを利用してカナダや他国に影響を与えることへの懸念が広がっている。戦略国際問題研究所(CSIS)の報告では「TikTokに限らず、SNSを利用した干渉の意図と戦略が重要である」と述べている。

中共政府は近年、習近平政権の下で国家安全保障法を強化し、超法規的かつ域外での情報収集を可能にする法律を施行してきた。これにより、中国企業や個人が世界中で「国家情報業務」に協力する義務を負っている。

米国では2024年4月、バイデン前大統領がバイトダンスに対してTikTokの売却を要求する法案に署名。これに応じない場合、TikTokはオンラインアプリストアから禁止されることとなった。この法律は1月19日に一時的に発効したが、トランプ大統領が1月20日の就任後、期限を75日間延長する大統領令を署名したことで一部サービスが再開された。

なお、TikTokユーザーの一部は「小紅書(RedNote)」と呼ばれる別の中国製アプリに移行しており、このアプリも同様に中国政府の影響を受けやすいとして懸念が広がっている。