政府が海外企業による対日投資について、安全保障上のリスクを低減するための事前審査制度の対象拡大を進める方針を発表した。外国政府の情報収集に協力する恐れがある企業について、安全保障上重要な業種への投資前に国への届け出を義務付ける。この規制強化は、特に中国共産党(中共)による情報流出への懸念を背景としている。
現行の外資規制
日本の外資規制(外国人株式保有制限)は外国為替及び外国貿易法(外為法)と個別業法に基づいている。
外為法では、外国投資家が非上場会社の株式等を取得する場合及び上場会社の株式の取得で出資比率が 10%以上となる場合等に、事前届出又は事後報告義務を課している。リスクが認められた場合、政府はその投資を制限、または中止させる権限を有している。
また、原子力や通信など国の安全保障上重要とされる「コア業種」に属する上場企業の株式を1%以上取得する際には、所管官庁による審査を伴う事前届け出が必要とされている。これにより、原子力、通信、半導体など国家安全保障に直結する分野に対する外国資本の影響を抑制し、重要な技術や情報の流出を防ぐことを目的としている。
ただし、「取得株式が10%未満」「外国投資家が当該企業の取締役会に参加しない」「株主総会で重要事業の譲渡や廃止を提案しない」といった基準を満たす場合、規制の対象外となる。例外に該当するかどうかは、企業側の自主判断に委ねられている。こうしたことから批評家からは「未承認の情報流出を十分に防げない」との懸念が示されている。
中共の「国家情報法」
日本が規制強化を進める背景には、2017年に中国で施行された「国家情報法」がある。同法は中国の個人や組織、企業に中共当局の情報活動に協力する義務を課している。外国企業や投資家が中共の情報活動に巻き込まれる可能性を高めており、他国の安全保障や経済活動に影響を及ぼす懸念が強まっている。
例えば、2021年に楽天グループが中国のネット大手・テンセントの子会社から3.65%の出資を受け入れたことは、内外で注目を集めた。この出資により、テンセントは楽天の主要な株主の一つとなった。このケースでは、政府が外為法に基づき定期的に調査を実施しているが、一部では「外国資本による情報流出リスクがある」との懸念が示されている。
識者は、日本の法規における潜在的な抜け穴について警鐘を鳴らしている。特に、中国資本の企業が電子商取引や金融業界に浸透した場合、住民登録情報や医療保健データにアクセスできる可能性が指摘されている。
中共がこうした情報を取得すれば、全方位的な商業競争を展開したり、政治家や要人の健康状態を把握するなど、情報戦の一環として活用される可能性があるという。
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