中国でのiPhone販売不況 経済低迷と国内ブランドの台頭

2025/01/24
更新: 2025/01/24

ニュース分析

Counterpoint Market Pulse Service(カウンターポイント・マーケットパルスサービス)の報告書によれば、2024年第4四半期、Appleの中国でのiPhone販売が大きく落ち込んだ。背景には、中国経済の低迷がある。また、国内ブランドとの競争激化も一因となっている。

世界第2位の経済規模を誇る中国では、スマートフォン全体の販売台数が前年同期比3.2%減少した一方、iPhoneの販売は18%以上急減した。その間に、ファーウェイやシャオミ(Xiaomi)といった国内ブランドが市場シェアを拡大した。

Counterpointのアソシエイトディレクターであるイーサン・チー氏は、「中国のスマートフォン市場は年初から第3四半期までは前年比で好調な成長を見せたが、第4四半期に入ると消費者が慎重な支出行動を取るようになり、勢いが鈍化した」と述べた。

かつての繁栄と現在の課題-Appleの中国市場での起伏

カリフォルニアに拠点を置くAppleにとって、中国市場は成功と苦境の両方を経験した場所だろう。

最も成功を収めたのは2010年から2015年の間で、この時期、iPhoneは不動産バブルなど複数の資産バブルがもたらした繁栄により、中国消費者にとって「手が届く贅沢品」として人気を博していた。当時、Appleは国内の競争相手も少なく、圧倒的な地位を築いていた。

Statista.comのデータによると、2010年には世界売上の5%未満だったAppleの中国市場の割合は、2015年には25%近くにまで成長し、同市場はAppleにとって世界第2位の重要市場となった。

しかし、最も厳しい時期は2020年だった。この年、中国市場のAppleの売上比率は15%にまで低下した。その後やや回復したものの、2024年第4四半期には再びiPhone市場全体と共に売上が落ち込んだ。

この10年間、中国でのAppleの低調な業績は、複数の資産バブル崩壊に伴う経済減速と軌を一にしている。経済の停滞は中国の人々にとって高給の仕事を見つけることや、贅沢品を購入する余裕を持つことを難しくしている。

過去1年間で、Appleに限らず複数の高級ブランドが中国市場で売上の減少を報告している。スイスの高級品メーカーであるリシュモンは、ブチェラッティ、カルティエ、デルヴォー、モンブランといった名高いブランドを擁するが、中国では売上が低迷したと発表した。一方で、他の地域では力強い売上の回復を見せている。

低価格モデルの投入と苦戦

こうした消費者行動の変化に対応するため、AppleはiPhoneの黎明期には考えられなかった戦略を採用した。それは、新興市場の中間所得層や低所得層をターゲットにした低価格モデルの投入である。例えば、iPhone 13 Pro Maxは機能によって1099ドルから1599ドルで販売されているが、iPhone SEはその半分以下の429ドルで販売されている。

しかし、これらの低価格モデルは中国の地元スマートフォンメーカーと競争するには十分ではなかった。2024年第4四半期、Xiaomiは10月に発売したフラッグシップモデル「Xiaomi 15シリーズ」の人気に支えられ、市場シェアで第2位に浮上した。

価格と競争力の課題

マンハッタン大学の経済学および金融学准教授であるジョルジオス・コイミシス氏は、「Appleの中国での販売が減少した理由の一つは、その高価格が多くの中国消費者の支出意欲と合致しなくなったことだ」と述べた。「vivoやXiaomiのような地元ブランドは、類似した機能をより手頃な価格で提供している。Appleのプレミアム価格戦略は他の市場では効果的だが、中国では消費者が価格に敏感で、高品質な代替品が豊富にある」

さらに、Appleにとって中国での逆風となっているのが、政府による公共機関でのiPhone使用禁止措置である。この政策も消費者行動に影響を与えている可能性がある。

中国市場へのローカライズの必要性

コイミシス氏は、Appleがローカライズにもっと力を入れるべきだと指摘する。「Huaweiをはじめとする地元ブランドは、中国市場に特化した機能、例えば国産のソフトウェアやハードウェアを積極的に取り入れている。一方、Appleはそれほど適応していない」と述べた。

また、中国企業が折りたたみ式スマートフォンなど最先端のデザインを提供し、競争がさらに激化している点もAppleにとって大きな課題である。

ニューヨークの LIU の経済学教授。コロンビア大学でも証券分析を教えている。フォーブス、インベストペディア、バロンズ、ニューヨークタイムズ、IBT、ジャーナル オブ ファイナンシャル リサーチなどの専門誌や雑誌に記事を寄稿している。また、「セミグローバル経済におけるビジネス戦略」や「中国の挑戦」など、多数の著書も執筆している。