WHOの財政危機深刻化 アメリカ脱退が引き起こす波紋

2025/01/25
更新: 2025/01/25

アメリカのトランプ大統領が世界保健機関(WHO)からの脱退を発表したことで、WHOは財政難に陥り、採用凍結や投資停止、不要不急の出張削減といった対策を講じる方針を明らかにした。WHOのテドロス事務局長は、「アメリカの脱退が財政状況をさらに厳しくした」と述べている。

国連は1月23日、アメリカが2026年1月22日にWHOを正式に脱退すると発表。トランプ大統領は1月20日の就任直後にこの決定を発表し、WHOがパンデミックなど国際的な衛生危機への対応を誤り、「中国(中国共産党)の操り人形だ」と非難した。WHOは翌21日、「最大の支援国であるアメリカの脱退を遺憾に思う」と声明を出した。

アメリカの決定を受け、他国にも同様の動きが広がっている。イタリアの副首相マッテオ・サルヴィーニ氏は1月23日、Xで「イタリアもアメリカに倣いWHOから脱退すべきだ」と投稿。「WHOに資金を提供する必要はなく、1億ユーロを国内の患者支援や病院の資金に使おう」と主張した。

一方、イタリアのメローニ首相はこの件に関し公式な見解を示していない。

アメリカが脱退することで、WHOの運営に必要な資金を他の加盟国で補填する必要が生じる可能性がある。日本も主要な拠出国の一つであるため、分担金の増加を求められる可能性がある。

WHO、コスト削減の緊急措置を発表

WHOのテドロス事務局長は、職員宛てのメールで、アメリカの脱退に対応するため、採用凍結や出張削減、会議のオンライン化などの緊急措置を実施すると説明した。また、「この決定により財政がさらに厳しくなり、職員にも不安が広がっている」と述べた。

WHOは「最も重要な分野を除き採用を凍結」「不要な出張を大幅削減」するとし、会議は特別な承認がない限りオンライン開催に限定。技術支援の派遣も最小限に抑えるとしている。さらに、オフィスの改装や拡張、関連する資本投資も停止する方針だ。

アメリカはWHOへの最大の支援国であり、WHO予算の16~18%を占める。2022~2023年の計画予算67億ドルの多くが職員給与や契約費用に充てられており、2024~2025年の予算68億ドルもアメリカの支払い継続が不透明な中で成立している。専門家はアメリカの拠出金なしでは、WHOの活動が制限される可能性が高いと指摘している。

WHOは新政権に対し、脱退決定の再考を強く求めている。

李皓月