広東省深セン市に住む人権擁護活動家の張海氏はある日、ネットショップから果物ナイフを2本購入した。すると、地元公安当局から「それは何に使うのか」と尋問された。
張氏は22日、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、「なぜ自分はナイフを買ってはいけないのか? これは全方位の監視だ」と非難した。
張氏の父親は中共ウイルス(新型コロナ)パンデミック期間、中共ウイルスに感染して死亡した。父の死をきっかけに、張氏は湖北省および武漢市政府に対して、「パンデミックの真相公開」を求めて、人権擁護活動を始めた。
一昨年、彼は「武漢の住民による医療保障を求める集会」をネット上で支持し、当局に密かに逮捕された。その後「騒乱挑発罪」で懲役1年3か月の判決を受け、昨年5月に服役を終えて出所した。
なお、「騒乱挑発罪(尋釁滋事罪)」とは、中国で幅広く使われる罪名で、当局がポケットに物を入れるように気軽に人を罪に問えるという意味で、「ポケット罪」との呼び名がついた。
最も安全な国?
中国外交部の林剣報道官は昨年11月の記者会見で「中国は世界で最も安全で、犯罪発生率も最も低い国の1つ」と主張した。
「もし本当に中国が(林剣報道官の言うように)最も安全なら、なぜ深センの公安は住民が長さ11センチの果物ナイフを買っただけで、あれほど神経質になるのか?」と張さんは疑問を抱かずにはいられなかった。
中国市民は当局による全方位の監視のなかで生きている。しかし、失踪者はほとんど見つからないのに、政府に不都合な言動をすればその居場所をただちに突き止められ、口を封じられる。
とくに近年では社会報復を目的とした無差別殺傷事件が相次いでおり、当局は神経を極限までピリピリさせている。
こうした高圧的な環境下で、長きにわたって受けてきた社会の不公平などにより行き場のない怒りを心に蓄積してきた一部市民は、やがては些細なことをきっかけにして爆発する。
「その(果物)ナイフ買って何に使う気なのか?」と神経尖らす深センの公安が恐れているのは、まさにこうした市民の「爆発」だ。
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