経団連 脱炭素化や人工知能に投資拡大 いっぽう米国は化石燃料増産

2025/01/27
更新: 2025/01/27

経団連(日本経済団体連合会)は、国内向けの民間設備投資について、2035年度に135兆円、2040年度に200兆円を目指す新たな目標を掲げる方針だ。日本経済新聞が伝えた。この目標は、27日に首相官邸で開催される「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」で、十倉雅和会長が表明する予定である。日米のエネルギー政策について、日本は脱炭素化を推進する一方、米国は化石燃料増産の方向となった。

新目標は、脱炭素化や人工知能(AI)などの成長分野への投資拡大を見込んでおり、官民一体となって日本経済を成長軌道に乗せることを狙いとしている。政府の試算によると、2025年度の名目ベースの民間設備投資は111兆円に達する見込みで、経団連がこれまで掲げてきた「2027年度に115兆円超」という目標は前倒しで達成できる見通しとなっている。

27日の会議には、石破茂首相をはじめ、武藤容治経済産業相、経済界の代表者、そして日本銀行の植田和男総裁らが出席する予定だ。石破首相にとっては就任後初めての開催となる。

経団連は、この新たな高い目標を設定することで、官民協力のもと、積極的な投資を推進し、日本経済の活性化を図ろうとしている。特に、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の成長分野に重点を置いた投資拡大が期待されている。

グリーン・トランスフォーメーション(GX)」とは、2050年カーボンニュートラルに向けた温室効果ガス排出削減の取り組みを経済成長の機会と捉え、経済社会システム全体を変革しようという概念だ。従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を重視している。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは、デジタル技術を活用して、ビジネスプロセス、組織文化、顧客体験を変革し、新たな価値を創出するプロセスだ。DXは単なる業務の効率化やデジタル化とは異なる。既存の概念を破壊し、デジタル技術を用いて新たな製品やサービス、ビジネスモデルを創出することで、社会制度や組織文化までも変革することを目指している。

この動きは、日本政府が推進する「新しい資本主義」の実現に向けた取り組みの一環とも言える。民間投資の拡大は、経済成長の重要な原動力となるため、政府と経済界が一体となって目標達成に向けて協力していくことが求められる。

米新政権は脱炭素化から方向転換

2025年1月に就任したトランプ新政権は、前バイデン政権の脱炭素化政策から大きく方向転換し、化石燃料の増産を重視する姿勢を示している。

トランプ大統領は就任初日に米国の環境・エネルギー政策を大きく転換し、パリ協定離脱や途上国支援の撤回、自動車の環境規制緩和などを矢継ぎ早に発表した。今後の見通しとして、2025年後半にはEV購入支援などを含むインフレ抑制法の修正、2026年1月にはパリ協定から正式離脱する見通しだ。

トランプ新政権の方針は、国産化石燃料の増産重視、化石燃料の輸出拡大による外交的影響力の強化、バイデン政権が課した火力発電所や新車販売への排出規制の撤回だ。トランプ大統領は選挙戦中から「エネルギー生産を劇的に増加させ、1年以内にエネルギーコストを半分にする」と発言しており、化石燃料の増産を強く推進する姿勢を示している。

一方で、一部の州政府やビッグテック企業による温室効果ガスの排出削減の取り組みは継続すると予想されるものの、バイデン政権が掲げた2050年ネットゼロ排出目標との乖離が広がる見通しである。

このように、トランプ新政権下では脱炭素化政策が大幅に後退し、化石燃料の利用拡大に舵を切る方針が明確になっている。

日本はアメリカの政策転換を受けて、戦略再考が迫られる中、27日の会議を開催する。今後はアメリカのエネルギー政策変更にも柔軟に対応し、日本独自のエネルギー安全保障戦略を堅持し、多国間協力を維持するなど、これらの取り組みにより、日本はアメリカの政策変更にも対応できる強靭なエネルギー需給構造を構築していく必要がある。

米新政権、AI投資積極推進

トランプ新政権は、AIへの大規模投資を積極的に推進する姿勢を明確に示している。就任直後の2025年1月21日、トランプ大統領はソフトバンクグループ、オープンAI、オラクルの3社が主導する「スターゲート」プロジェクトを発表した。

このプロジェクトでは、今後4年間で最大5千億ドル(約78兆円)をAIインフラ整備に投資し、10万人以上の雇用創出を目指している。具体的には、米国内でAI用のデータセンターやキャンパスの建設を計画している。

トランプ大統領は、この投資計画を「史上最大級のAI投資」と強調し、政権の成果として国民にアピールしている。また、AIの分野でアメリカが世界の主導権を握ることを目指し、今後規制緩和を進める方針を示している。

実際に、トランプ大統領は就任2日目の1月20日に、前バイデン政権が出したAI規制に関する大統領令を撤回した。これは、トランプ政権がAIを中心とする技術革新を後押しする姿勢を明確にしたものと解釈されている。

一方で、この大規模投資計画には疑問の声も上がっている。イーロン・マスク氏は、参加企業が実際には十分な資金力を持っていないとして、計画の実現性に疑問を呈している。

日本政府内では、この米国のAI政策に対して期待と懸念が入り混じっている。AI投資を強力に進める戦略には概ね歓迎する声がある一方で、「AIのアメリカ一強」体制が加速することへの危惧も存在する。

トランプ新政権のAI政策は、規制緩和と大規模投資を通じてアメリカのAI開発を加速させる方向性を示しており、今後のグローバルなAI開発競争に大きな影響を与える可能性がある。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。