ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、欧州グリーンディールの見直しを求め、高いエネルギー価格が民主主義政府を崩壊させる可能性があると警告した。1月22日、ストラスブールでの演説で、トゥスク首相は「一部のEU規制がエネルギー価格を不必要に高くしている状況を生み出している」と述べた。現在、ポーランドは欧州連合理事会の議長国を務めている。
中道右派のトゥスク首相は、欧州議会の議員たちに対し「エネルギー価格の高騰は多くの民主主義政府を揺るがす可能性がある」と警告した。
EUは2050年までに「気候中立」を達成することを目指しており、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が推進する「欧州グリーンディール」がその柱となっている。気候中立とは、温室効果ガス排出量を正味ゼロにすること。
しかし、トゥスク首相は「ヨーロッパのエネルギー価格が世界で最も高いのは受け入れられない。最も安価にすることができないのなら、少なくとも他国と同水準であるべきだ」と述べた。
さらに「私たちは知恵を絞り、グリーンディールを含むすべての法的措置を見直さなければならない。アメリカや中国と競争したいと思うが、現状ではエネルギー価格が彼らの3倍にもなっている」と語った。また「ヨーロッパが破産すれば、我々の代わりに誰が環境を守ってくれるだろうか」と訴えた。
ETS 2に関する懸念
トゥスク首相は2027年から導入予定のEUの炭素取引制度「ETS 2」にも言及した。この制度は建物、道路輸送、その他の分野での燃料燃焼によるCO2排出を削減することを目的としており、燃料供給業者に排出量の追跡と報告の責任を課すものである。
トゥスク首相は「政治的影響は容易に予測できる。エネルギー価格が上昇し続ければ、非常に悪い、破滅的な政治的影響が出るだろう」と述べた。
国際エネルギー機関(IEA)によると、ポーランドでは石炭が依然として発電用燃料として広く利用されており、その理由は供給量が豊富でコストが低いことである。しかし、ポーランド政府は2040年までに石炭火力発電所の大部分を国内エネルギーシステムから排除し、最終的には石炭の利用を完全に廃止する計画を立てている。
トゥスク首相はまた、欧州がトランプ米大統領によるNATO加盟国への軍事費増額要求を拒否するのではなく、受け入れるべきだと主張した。
「内部安全保障」の問題について、トゥスク首相はEUに対し「違法移民の脅威に対して甘いアプローチを取るべきではない」と警告し、「ヨーロッパは国境のない大陸であり、すべての合法的または違法な移民を受け入れるべきだと主張する人々に対して、会場の一部は怒りを示し、時には嘲笑さえもしていた」と述べた。
「依然として地球規模の最優先課題」
EUは、エネルギー価格を抑えつつ産業競争力を維持しながら脱炭素化を進めるという課題に直面している。
2024年9月、欧州委員会が要請したEU競争力に関する報告書で、マリオ・ドラギ元欧州中央銀行総裁でイタリアの前首相は、EUが安価なロシア産ガスを失った影響で高騰するエネルギー価格に苦しんでいると指摘し、迅速な対応がなければ「緩やかな衰退」に陥ると警告した。
今年の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、フォン・デア・ライエン欧州委員長が1月21日の特別演説で脱炭素化への取り組みを改めて表明した。フォン・デア・ライエン委員長は「気候変動は依然として地球規模の最優先課題である。脱炭素化や自然を基盤とした解決策、循環型経済の構築、自然資源の活用がその焦点である」と述べた。
トランプ氏には直接言及しなかったものの、1月20日にトランプ氏がアメリカをパリ協定から離脱させる大統領令に署名したことを受け、欧州は引き続き気候行動に関する国際条約を順守すると明言した。
フォン・デア・ライエン氏は「パリ協定は人類全体にとって最大の希望である。欧州はこの方針を維持し、自然を守り、地球温暖化を止めるためにすべての国と協力を続ける」と述べた。
欧州委員会は本件に関するコメント要請には応じていない。
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