岩屋外相 中国共産党の脅威には触れず 中国人ビザ緩和への党内反発に「誤解」

2025/01/27
更新: 2025/01/27

岩屋毅外務大臣は、中国人観光客向けのビザ緩和方針について、自民党内から出ている反発に対し、「多分に誤解がある」と述べ、理解を求めた。しかし、国民が本質的に懸念しているであろう「中国共産党の脅威」については触れなかった。

昨年12月に発表された中国人の訪日観光ビザの条件緩和措置に関して、自民党内から「必要性に疑問がある」「事前の説明がなかった」などの否定的な意見が相次いでいた。これに対し岩屋外相は、24日の記者会見で「今回の緩和措置が直ちに中国人観光客の無秩序な急増につながるものではない」と説明した。

外相は、この緩和措置が観光の推進や人的交流の促進、治安への影響などを総合的に勘案して決定されたものだと強調した。また、ビザ申請時や入国時に厳格な審査を行っていることも付け加えた。

自民党側への事前説明がなかったとの批判に対しては、「過去に緩和した際にも与党の了承を事前に得たことはない」と反論した。岩屋外相は、様々な意見や指摘があることは事実だとしつつも、内容を正確に理解してもらえるよう、引き続き丁寧に説明していく考えを示した。

自民党内部からの懸念

自民党内からは、この政策に対して複数の懸念が表明されている。外交部会と外交調査部会の合同会議では、ビザ要件緩和に否定的な意見が続出した。星野剛士外交部会長は「外交部会長としてなぜ急いでこのような判断をしたのか、その必要性はどこにあるのかといった疑問を抱かざるを得ません」と述べ、政策決定の過程と必要性に疑問を呈している。

また、「中国との間に懸案がある中で国益にかなうものではない」という意見も出ており、現在の日中関係の文脈でこの政策を実施することへの懸念が示されている。

さらに、一部の議員からは「オーバーツーリズム」への懸念も表明され、「こんなことをやって大丈夫か」という声も上がっている。

これらの反論は、政策の必要性、タイミング、国益への影響、そして観光客の急増による潜在的な問題点を指摘しており、岩屋外相の主張に対する具体的な反対意見となっている。

日本国民の懸念は「中国共産党の危険性」

岩屋外相の発言では、中国共産党の脅威・危険性に関する直接的な言及はない。しかし、日本国民から「中国人の訪日観光ビザの条件緩和措置」に対して心配の声が上がっている原因の主たるものは、「中国共産党と日本が協力関係を作って行くことの危険性」を感じ取っているからであり、日本国民が「中国共産党の脅威」に対して不安を感じていることにあるだろう。

ところが、岩屋氏が「誤解」と指摘している点は、主に次の二つの側面に関するものだ。一つはビザ緩和の影響についてで、岩屋外相は「今回の緩和措置が直ちに中国人観光客の無秩序な急増につながるものではない」と述べている。これは、ビザ緩和が即座に大量の中国人観光客の流入を引き起こすという懸念に対する反論だ。もう一つは、政策決定プロセスについてで、岩屋氏は「事前に与党の審査を経て了承を得たことは、過去、一度もない」と説明している。これは、自民党内から出ている「事前の説明がなかった」という批判に対する回答だ。

しかし、国民の懸念は単なる観光客の増加や政策決定プロセスだけでなく、中国共産党の影響力拡大や安全保障上のリスクにも及んでいると考えられる。なぜなら日本政府は防衛増税を論じており、防衛力強化の念頭にあるのは中国共産党軍による脅威だ。「軍事的な脅威であるとしている敵国に対し、友好を進めているのはどういうわけか?」という混乱が国民に生じている。「十分な事前の説明がなかった」というのは、自民党内部の一部が感じているのはもとより、国民が感じていることであろう。岩屋氏の説明は、これらの根本的な懸念に十分に応えていないといえる。

ビザ緩和政策は経済効果と安全保障のバランスを取る難しい課題を提起している。岩屋氏は「観光の推進や人的交流の促進、治安に与える影響などを総合的に勘案して決定した」と述べているが、中国海警局の船が、ほぼ毎日、尖閣諸島周辺を航行するといった中国共産党の脅威に対して具体的な対策や考慮について言及していない以上、矛盾が存在する。

このギャップが、国民の懸念と岩屋氏の説明との間の「誤解」の一因となっている可能性がある。より透明性の高い説明と、安全保障上の懸念に対する具体的な対応策の提示が、この「誤解」を解消するために必要だろう。今後益々国民の「中国共産党に対する懸念の声」が代議士の声を通じて自民党幹部に届くことになるかもしれない。自民党内には中国との関係悪化を懸念する声も強くある。今後、政府と与党の間で更なる議論が行われることが予想される。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。