経産省エコカー補助金 中国を利する懸念 4月から新制度導入

2025/01/27
更新: 2025/01/27

経済産業省は2025年4月から、電気自動車(EV)などのエコカー購入者への補助金制度を一部改定する方針を固めた。新制度では、環境に配慮した「グリーン鉄」を車体に採用した自動車に対し、現行の補助金に加えて最大5万円の上乗せを行う。一方、低価格輸出を強化している中国を利する懸念もある。

グリーン鉄とは、製造過程で二酸化炭素(CO2)の排出を抑えた鋼材のことを指す。通常の鉄鋼製造では多くのCO2が排出されるが、グリーン鉄の製造では再生可能エネルギーや水素を活用するなど、環境負荷の低減に努めている。

この新制度により、経済産業省は自動車の走行時だけでなく、製造過程におけるCO2削減も促進したい考えだ。同時に、鉄鋼メーカーに対しても脱炭素投資を促す狙いがある。

現行の補助金制度では、EVの場合最大85万円、軽EVやプラグインハイブリッド車(PHV)で最大55万円、燃料電池車(FCV)が255万円支給されている。新制度導入後は、グリーン鉄を採用した車種に限り、これらの金額に最大5万円が上乗せされることになる。

自動車業界では既に、グリーン鉄の活用に向けた動きが始まっている。例えば、メルセデス・ベンツはスウェーデンの企業と提携し、年間約5万トンのCO2フリー鋼の調達を決定している。また、フォード社も欧州の鉄鋼メーカーと協力し、グリーン鉄の開発を進めている。

日本でも、日産自動車が神戸製鋼所と提携し、グリーン鉄を使用した新型車の開発に着手している。今回の補助金制度の改定により、こうした取り組みがさらに加速することが期待されている。

新制度は、自動車産業全体の脱炭素化を促進する一方で、消費者にとってもエコカー購入時のインセンティブとなる。ただし、グリーン鉄の生産コストは従来の鉄鋼より高いため、車両価格への影響も懸念される。

経済産業省は今後、具体的な制度設計や対象車種の選定を進めていく方針だ。自動車メーカーや鉄鋼業界の反応、そして消費者の購買行動への影響が注目される。

輸出攻勢強化中の中国を助けることに

経済産業省のエコカー補助金制度は、意図せず中国製電気自動車(EV)の日本市場への流入を促進する可能性がある。トランプ新政権が中国に対して厳しい関税政策を検討している一方で、中国は過剰生産品の低価格輸出を継続している。

日本の補助金制度は国内外のメーカーを区別せずに適用される可能性が高く、これは国際的な自由貿易の原則に基づいている。このため、中国製EVは価格競争力を活かして日本市場に参入できる可能性がある。

グリーン鉄の供給源についても、日本の鉄鋼メーカーだけでなく、中国を含む海外メーカーのグリーン鉄も対象となる可能性がある。これは中国製品の流入をさらに促進する恐れがある。

結果として、この補助金制度は日本の自動車産業に予期せぬ影響を与える可能性がある。経済産業省は、国内産業の保護と環境政策の推進という本来の目的を達成するため、グリーン鉄の定義や原産地規制などの詳細な基準を慎重に設計する必要がある。中国共産党を利する政策となれば本末転倒である。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。