政府 能動的サイバー防御法案の全容公表 中国共産党からの攻撃に高まる懸念 

2025/01/28
更新: 2025/01/28

日本政府は、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐための「能動的サイバー防御」を導入する関連法案の詳細を明らかにした。この法案には、通信の秘密を守りつつ、適切にサイバー防御を行うための新しい独立機関「サイバー通信情報監理委員会」の設立が含まれている。近年、中国共産党(中共)のサイバー攻撃が世界的に拡大しており、各国で深刻な懸念が示されている。

この法案は、「重要電子計算機に対する不正行為被害防止法案」と、警察官職務執行法などの現行法を改正する15の現行法改正案を束ねた整備法案で構成されている。

政府と与党は2月上旬に閣議決定し、通常国会に提出する予定だ。新設される監理委員会は、通信情報の取得や分析が適切に行われているかを監督する役割を担う。さらに、警察庁や防衛省などのサイバー攻撃対策に関わる職員が情報を漏えいした場合、懲戒処分を要求する権限も持つことになる。

この法案は、昨今増加するサイバー攻撃への対策強化を目的としている。能動的サイバー防御を導入する方針は、政府が令和4年末に策定した国家安全保障戦略に明記された。以降、自民党の経済安全保障推進本部(本部長・小林鷹之衆院議員)、デジタル社会推進本部(本部長・平井卓也衆院議員)、安全保障調査会(会長・木原稔衆院議員)、情報通信戦略調査会(会長・野田聖子衆院議員)が議論を積み重ね、政府に対する提言等を通じて導入に向けた道筋を示してきた。

政府は1月22日に開かれた合同会議で法案の概要を示し、了承を得た。法案には自民党の提言が多く反映されており、官民連携の強化や通信情報の利用、アクセス・無害化措置に加え、政府のサイバーセキュリティ対策体制の抜本的な強化が盛り込まれている。この法案が成立すれば、日本のサイバーセキュリティ対策は大きく前進することが期待される。しかし、通信の秘密と安全保障のバランスをどう取るかが今後の課題となりそうだ。

中国共産党によるサイバー攻撃

近年、中国共産党(中共)によるサイバー攻撃活動が世界的に拡大し、各国の安全保障当局や専門家から深刻な懸念が示されている。

2021年7月、米国は同盟国と共に中国による世界的なサイバー攻撃活動を非難した。この非難には北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)、英国、オーストラリア、日本、ニュージーランド、カナダが加わり、国際的な問題となっている。

専門家によると、中国は民間ハッカー企業を通じて活動することが多く、インド太平洋地域の政府や産業に対するサイバー攻撃の規模を拡大させている。その標的には日本や台湾、南シナ海における中国の領有権主張に異議を唱える国々が含まれるという。

2024年2月には、米国司法省とFBIが中国政府支援の広範なサイバースパイ活動「ボルト・タイフーン」の一部を無力化したと報告した。この活動は、将来の危機時に米国とアジア地域間の重要通信インフラを混乱させる能力の開発を目指していた可能性が指摘されている。

2024年初頭、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)のジェン・イースタリー長官(当時)は、過去2年間で中国による米国の重要インフラに対する悪意あるサイバー活動が戦略的に転換していることへの懸念を米国議会議員に対する書面証言で述べた。

こうした状況を受け、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国のサイバーセキュリティ機関は、中共の戦術や手順を詳述した勧告を発行し、各国のネットワーク防御者に対策を促している。

一方、中共政権は一貫してこれらの非難を否定し、逆に自国がサイバー攻撃の被害者であると主張しているが、国際社会の懸念は依然として強い。サイバー空間における中国の活動は、今後も世界各国の安全保障上の重要課題であり続けると考えられる。
 

大紀元エポックタイムズジャパン記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。