旅行大手H.I.S. 雇用調整助成金62.5億円を自主返還  子会社含むガバナンス強化へ

2025/01/28
更新: 2025/01/28

旅行大手H.I.S.(HIS)は、2020年3月から2022年12月にかけて受給した国の雇用調整助成金の一部が不適切であったとして、約62.5億円を自主返還することを発表した。同社は、助成金242億円を受給していたが、調査の結果、休業日として申請した日のおよそ2割以上で従業員の就労が確認されたため、受給条件を満たしていないと判断された。

さらに、HISの連結子会社である「ナンバーワントラベル渋谷」でも約1億円の不正受給が明らかになり、違約金を含めて1億3千万円を返還する方針を示している。

問題が発覚したのは、2024年4月23日に会計監査人である有限責任監査法人トーマツからの情報提供がきっかけだった。同法人は、HISの申請プロセスに勤務実態と申請内容の不一致がある可能性を指摘した。その後の社内調査で不適切な受給が確認された。

HISは今回の問題を受けて、ガバナンス体制の強化に取り組む意向を表明。再発防止策として、助成金申請の透明性を確保する新しい内部監査プロセスの導入や、従業員の労務管理体制の見直しを行う予定だとしている。同社は「従業員や取引先、顧客に多大なご迷惑をおかけした」と謝罪の意を示した。

雇用調整助成金は、コロナの影響で業績が悪化した企業を支援する目的で設けられた制度だ。不正受給の発覚は、制度運用の適正性や監査体制の不備を浮き彫りにしている。

一連の問題により、株価への影響も懸念されており、同業他社への波及効果も注目されている。