トランプ 2.0 で2025年の金相場は強気に?

2025/01/28
更新: 2025/01/28

ドル高と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ予測が弱まる中でも、トランプ第2期政権下での関税政策の不透明感が金需要を押し上げる可能性がある。これにより、2025年の金価格は史上最高値を更新する見通しだ。

ロイターが36人のアナリストとトレーダーを対象に行った調査によれば、2025年の金価格の中央値は1トロイオンスあたり2756ドルと予測されており、3か月前の調査での2674ドルから上方修正された。

現物金価格は2024年10月下旬に2790.15ドルの過去最高値を記録した。本稿執筆時点(1月27日)の最新価格は2742ドルで、2024年の平均価格は2386ドルだった。

トランプ政権の関税政策と地政学リスクが金価格を押し上げる可能性

貴金属ディーラー「KITCO金拓」によると、トランプ大統領が就任後、大胆な行政命令を連発しており、関税政策、移民改革、国際協定の離脱案などを含むこれらの措置は、金融市場に大きな影響を及ぼしている。投資家はこれをインフレヘッジやリスク回避資産の選択に結び付けている。

特に提案されている関税政策は、金価格上昇の主要な原動力になるとみられている。トランプ政権は2025年2月1日からカナダとメキシコに対して約25%の関税を課し、中国からの輸入品に10%の関税を追加することを提案している。

また、金はドル安の影響を相殺する効果も期待されている。トランプ政権が掲げる減税や規制緩和は経済活動を刺激する一方で、国家債務や財政赤字の増加リスクを伴う可能性がある。さらに、地政学リスクの高まりも金の魅力を後押ししている。トランプ政権の第1期の強硬な外交政策は世界に強い印象を残しており、投資家はインフレ動向とFRBの潜在的な政策の相互作用を注視している。

2024年、金価格は年間で27%上昇し、2010年以来の最大の上げ幅を記録。これにより、金は最も好調な資産の一つとなった。この背景には、投資家が金を世界的リスクに対するヘッジ手段として選んだことや、FRBが3回の利下げを行ったことがある。

2024年11月から12月にかけて金価格は下落したが、これは米大統領選後の売りや、12月のFRB会合で2025年の利下げ予測が引き下げられたことが原因とされている。

関税はインフレを引き起こすのか?

トランプ政権の関税政策をめぐる不透明感と、それが潜在的な貿易摩擦によってインフレを誘発する可能性への懸念が、1月の金需要を支えた。

ロイターによれば、独立系アナリストのロビン・バー氏は、「地政学的リスクが各地で膨れ上がり、インフレリスクを高め、金の避難資産需要を押し上げている」と述べている。

また、独立系アナリストのロス・ノーマン氏は、「金価格が過去最高値を更新する可能性が高い。これにより、金市場の一部の分野は恩恵を受ける一方で、他の分野は打撃を受けるだろう」と指摘した。ノーマン氏は、価格に敏感なアジア地域では宝飾品の需要が減少する可能性がある一方で、中央銀行による金購入や投機的な金取引への関心は引き続き高い水準を保つと述べている。

一方、CNBCは、トランプ政権の関税政策が世界的な貿易戦争を引き起こし、アメリカ国内でインフレを再燃させる可能性があるという懸念がある中で、JPモルガンのCEOジェイミー・ダイモン氏が1月22日に次のように述べたと報じた。「関税は適切に活用されれば、アメリカの利益を守り、貿易相手国との再交渉を促し、アメリカにとってより良い取引をもたらす可能性がある」

ダイモン氏はさらに「関税は経済ツールにすぎない。それがインフレを引き起こすかどうかは、どのように、なぜ活用するかにかかっている」と述べた。

トランプ政権は第1期でも広範な関税を課したが、この期間中、インフレ率は毎年2.5%以下に抑えられていた。

銀市場の見通し 供給不足が続く

ロイターの報告書によれば、アナリストは、銀価格が工業用途、特にグリーン技術や再生可能エネルギー分野での需要の増加から恩恵を受けると予測している。しかし、ETF(上場投資信託)による投資需要の低迷や、関税が世界経済成長に与える潜在的な影響が銀の見通しを抑制する可能性もある。

スタンダードチャータード銀行のアナリスト、スキ・クーパー氏は「2025年も銀市場は供給不足が続くだろうが、供給不足だけでは銀価格を押し上げるには不十分だ」と述べた。また、ここ数か月間、投資需要は伸び悩んでいるとも付け加えた。

調査によれば、2025年の銀価格の平均予測は1トロイオンスあたり33.10ドルで、前回調査の33.75ドルより低いものの、現在の30.20ドルより高い水準である。

 

夏雨