公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の調査によると、2024年の紙と電子を合算した出版市場の推定販売金額は前年比1.5%減の1兆5716億円となり、3年連続で前年割れを記録した。ただし、減少幅は縮小しており、紙の出版が前年比5.2%減だった一方、電子出版は前年比5.8%増と堅調に推移している。紙出版は書籍・雑誌ともに減少したが、電子出版はコミック、書籍、雑誌すべてでプラス成長を記録した。
紙出版物の販売動向
紙出版物(書籍・雑誌)の推定販売金額は前年比5.2%減の1兆56億円となり、依然として厳しい状況が続いている。内訳は、書籍が前年比4.2%減の5937億円、雑誌が同6.8%減の4119億円で、特に雑誌の減少幅が大きかった。書店の閉店が相次ぐ中、書籍・雑誌ともに販売部数は減少傾向にある。しかし、一部の既存店舗では店頭売り上げが前年を上回るなど、回復の兆しも見られる。
特に書籍分野では、文芸書や学習参考書、ビジネス書が好調で、これらのジャンルが市場を下支えしている。
電子出版の成長と課題
コロナ禍による外出自粛の影響で電子書籍をはじめとするデジタルコンテンツの需要が拡大し、電子出版の推定販売金額は前年比5.8%増となった。この成長により、出版市場全体の減少幅が緩和される形となった。
しかし、電子出版の成長だけでは紙出版物の販売減少を完全に補うには至らなかった。電子出版が出版業界全体の救世主となるには、さらなる普及と市場拡大が必要である。プラットフォームの利便性向上や多様なコンテンツの提供が課題となっている。
出版業界の長期的な動向と課題
帝国データバンクの調査によると、出版業界の売り上げは1996年まで拡大基調で推移していたが、1997年の消費税率引き上げ(3%→5%)を契機に初めて前年割れを記録。その後、インターネットの普及や活字離れ、少子高齢化などの影響を受け、縮小が続いている。特にインターネットの台頭は情報のデジタル化を加速させ、紙出版物の売り上げ減少に拍車をかけている。
さらに、書店の閉店が相次ぎ、地域コミュニティにおける書籍の流通が狭まり、地方の出版文化が縮小するリスクが指摘されている。これに対して、地方書店を支援する施策や新たな流通経路の確立が業界の重要課題とされている。
また、少子高齢化が進む中で、シニア層向けの書籍需要を掘り起こす施策や、学校教材市場への注力も期待されている。これらの取り組みが、出版業界の縮小トレンドを止め、成長に向かう一歩となる可能性がある。
今後の展望
2024年の出版市場は、電子出版の成長が市場全体の下支えとなる一方で、紙出版の減少が市場縮小の要因となった。ただし、紙出版においては一部の既存店舗で売り上げが回復するなど、回復の兆しも見られる。電子出版と紙出版の両方をバランスよく成長させる取り組みや、地域書店の支援策が今後の業界再建の鍵を握るだろう。
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