国際 米上院議員らは公聴会で専門家に対し、パナマ運河が国家安全保障と貿易に及ぼす影響について質疑を行った

米公聴会 パナマ運河の中共支配 中立条約違反の可能性

2025/01/29
更新: 2025/01/29

米上院で行われたパナマ運河の国家安全保障上の脅威に関する公聴会で「外国勢力が運河を運営することは禁じられている」と国際法の専門家が証言し、中国が事実上運河の両端の港を支配していることが中立条約に違反する可能性があると指摘した。

ジョージ・メイソン大学アントニン・スカリア法律大学院の教授であり、ヘリテージ財団のマーガレット・サッチャー自由センターのシニア研究員を務めるユージン・コントロヴィッチ氏は、1月28日、米上院商業・科学・運輸委員会に出席し、パナマ運河が米国の貿易と国家安全保障に及ぼす影響について証言を行った。

パナマ運河の軍事的価値

パナマ運河は、経済的・軍事的に極めて重要な戦略拠点であり、米国の大西洋・太平洋艦隊の主要な航路として機能している。特に、中国共産党政権と紛争が発生した際には、米海軍の機動力を左右する重要な通路となる。

コントロヴィッチ氏は、パナマ政府が運河の両端の港の運営を中国企業に認めたことは、米国との条約に違反する可能性があると指摘した。ただし、違反に該当するかは、中国企業の運営への関与度合いによるとも述べた。

長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)の子会社であるハチソン・ポートは、1997年以来、バナマ運河の太平洋側にあるバルボア港と、大西洋側にあるクリストバル港の運営を担っている。同社の特許契約は、2021年に競争入札なしで25年間延長された。

これを受け、パナマ当局は1月20日、香港に拠点を置くこの港湾運営会社に対する監査を開始したと発表した。

中共の影響力拡大と安全保障上の懸念

コントロヴィッチ氏は、香港の企業はかつて英国の統治下にあったが、1997年の香港返還後、中国共産党(中共)による支配を受けていると指摘した。

「運河が妨害行為や侵略行為によって閉鎖される事態を待つ必要はない。それが起これば、米国にとって壊滅的な影響をもたらすだろう」と警鐘を鳴らした。

中共は中国企業に当局の諜報機関と協力することを義務付けている。

コントロヴィッチ氏は、パナマ運河条約の規定について言及し、「米国は、中立性を脅かすいかなる脅威に対しても、運河を防衛することができる」と述べた。

パナマ運河は、1977年にジミー・カーター大統領が署名した条約に基づき、1999年12月31日に米国からパナマに引き渡された。この協定には、「パナマ運河の永久中立と運営に関する条約(中立条約)」および「パナマ運河条約」の二つが含まれている。

米議会、パナマ政府の中共寄り姿勢に懸念

公聴会では、共和・民主両党の議員が、中共によるパナマ運河への影響拡大に懸念を示した。

「米国はパナマ運河を建設し、その費用を負担した。しかし、パナマ政府は米国を公平に扱わず、重要インフラの管理権を中国に譲り渡している」と、同委員会の委員長を務めるテッド・クルーズ上院議員は述べた。

一方、委員会の民主党筆頭議員であるマリア・キャントウェル氏は、インフラの安全上のリスクが供給と価格に影響を及ぼす可能性があると懸念を表明した。現在実施されている香港企業の監査が、米国企業の参入機会を生む可能性があるのかどうかについて疑問を呈した。

同氏は「私の主張は、米国を海洋強国として再興し、サプライチェーンを強化し、消費者のコストを削減し、安全保障を確保することだ」と強調した。

中共の影響力拡大が米国企業に及ぼす影響

米連邦海事委員会のダニエル・マフェイ委員は、米上院議員に対し、米国には海外の港湾を直接管轄する権限がないと説明。しかし、中共政府が自国企業に補助金を提供し、入札価格を引き下げているため、米国企業は国際的なプロジェクトの競争で大きな不利を強いられていると指摘した。

ダン・サリバン上院議員は、中国が世界各国で官僚への賄賂を用いて影響力を拡大していることを指摘し、「なぜ香港企業に対し、競争入札なしで25年間の契約が認められたのか?」と疑問を呈した。

海事委員会のルイス・ソラ委員長は、パナマ運河庁はパナマ政府とは独立した組織であり、運河の運営を担っていると説明した。しかし、ハチソン・ポートが運営する港は、船舶の出入りが運河の交通に影響を及ぼすため、特別な許可を得ていると指摘した。

さらに、米国はパナマ運河だけでなく、運河周辺の土地、軍事基地、水路もパナマに譲渡したと付け加えた。

 

 

テキサス州を拠点に活動する米国のエポックタイムズ記者。州政治や選挙不正、失われつつある伝統的価値観の問題に焦点を当て執筆を行う。テキサス州、フロリダ州、コネチカット州の新聞社で調査記者として活動した経歴を持つ。1990年代には、プロテスタント系のセクト「ブランチ・ダビディアン」の指導者デビッド・コレシュについて暴いた一連の記事「罪深きメシア(The Sinful Messiah)」が、ピューリッツァー賞の調査報道部門で最終候補に選出された。