トランプ大統領が米保健福祉省(厚生)長官に指名したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、1月29日、上院財政委員会での承認公聴会に臨む。同委員会は米保健福祉省(HHS)を管轄し、承認手続きを監督する。
翌1月30日には、上院保健・教育・労働・年金委員会(HELP)が主催するフォーラムに出席する予定だ。ただし、ケネディ氏の指名承認を審議するのは上院財政委員会のみであり、委員会での投票を経て、本会議での採決に進むかが決まる。
承認には過半数の賛成が必要であり、現在共和党が53対47で多数派を占めている。
賛否が分かれるケネディ氏の政策
草の根団体や一部の議員は、ケネディ氏の政策を評価している。同氏はワクチンの安全性、アメリカの食品から有害化学物質を排除する政策、政府の医療機関に対する企業の影響力排除を掲げており、これを支持する声も多い。
一方で、民主党議員の多くや、一部の共和党議員、医療関連団体は、これらの問題に関するケネディ氏の見解に疑問を呈し、一部では「危険」と批判する声もある。
環境弁護士としての経歴と政策方針
ケネディ氏は環境弁護士であり、子どもの健康防衛(Children’s Health Defense)の創設者でもある。2024年の大統領選では民主党候補として出馬し、その後無所属に転じたが、同年8月に選挙戦を離脱し、トランプ氏を支持する立場を表明した。
同氏の選挙公約には、慢性疾患の克服、子どもの健康改善、政府機関に対する企業の影響力排除などが含まれる。
厚生長官に承認されれば、疾病予防管理センター(CDC)、食品医薬品局(FDA)、国立衛生研究所(NIH)を含む13の関連機関を管轄することになる。
ケネディ氏は、HHS全体にわたる大規模な改革を公約し、FDA、CDC、農務省(USDA)への大企業の影響力を排除しない限り、医療制度の大きな変革は望めないと主張している。
2024年9月に大紀元に対し、薬の開発や医薬品の製薬業界の支援機関としての役割ではなく、自閉症、自己免疫疾患、神経発達疾患の原因に焦点を当てるようNIHを改革すると語った。
また、超加工食品に含まれる有害化学物質の排除を推進するほか、製薬会社の広告規制の見直しを訴え、テレビでの製薬広告を禁止するようトランプ大統領に促した。製薬会社が法的責任を免れる仕組みの撤廃にも言及している。
今回の公聴会では、ワクチン政策、飲料水のフッ素添加、食品安全、中絶などに対する立場について質問に答えるとみられる。
支持者と反対者
ケネディ氏に対する評価は賛否が分かれている。
同氏はランド・ポール上院議員、ロン・ジョンソン上院議員、マークウェイン・マリンズ上院議員などから支持を受けている。
2024年12月には、「アメリカを再び健康に(MAHA)」議員連盟が結成され、地方・州・連邦レベルでMAHAの取り組みに関心を持つ関係者との連携を深めることを目的としている。設立メンバーは、ロジャー・マーシャル上院議員、リック・スコット上院議員、ロン・ジョンソン上院議員、トミー・タバービル上院議員、シンシア・ルミス上院議員である。
健康推進団体「グローバル・ウェルネス・フォーラム(Global Wellness Forum)」の創設者セイヤー・ジ氏は1月28日に、大紀元に対し、「この公聴会は単なる政治的な瞬間ではなく、国民の声がついに勝るかもしれない歴史的な転換点となる可能性がある」と語った。
また、ケネディ氏を支援する政治行動委員会(PAC)「アメリカン・バリューズ」の共同創設者アンソニー・ライオンズ氏は、「彼は、叔父や父と同じく腐敗と闘う人物だ」と評価した。
「ケネディ氏は、企業の影響力によって引き起こされた慢性疾患の流行を食い止め、科学的に裏付けられた医療基準を確立するだろう」と述べた。
ワクチン政策への批判と擁護
ケネディ氏はワクチンの安全性向上と情報提供の徹底を訴えているが、一部の批判者は彼の姿勢を「反ワクチン」と捉え、特にこの点に関して強い批判の声を上げている。
ケネディ氏は2024年9月に大紀元に応じ、「私は決して反ワクチン派ではない。人々は選択の自由を持つべきであり、その選択は可能な限り最良の情報に基づくべきだ。科学に基づいた安全性の研究を充実させ、人々がワクチンの是非を自ら判断できるようにする」と述べた。
ティナ・スミス上院議員は今週、「ケネディ氏が我々の健康を守るとは思えない。彼の経歴には信頼に足る証拠が何もない」と批判した。
進歩派の医療擁護団体「プロテクト・アワ・ケア」は2024年12月に「Stop RFK War Room」キャンペーンを発表し、複数の州で議員に対しケネディ氏の承認に反対するよう求める広報活動を展開した。
また、「科学の公益のためのセンター(Center for Science in the Public Interest)」の会長ピーター・G・ルーリー氏は声明で、「反ワクチン派のケネディ氏を厚生長官に指名するのは、地球平面説支持者をNASAの長官に任命するようなものだ」と非難した。
一方、2024年12月、シンシア・ルミス上院議員は大紀元に対し、ケネディ氏のワクチン政策に特に懸念していないと語った。
「彼はワクチンに関する情報を透明化し、人々が自分で判断できるようにすることを重視している。ワクチン接種を妨げようとしているわけではない。彼のワクチン政策には全く問題を感じていない」と強調した。
人工妊娠中絶をめぐる議論
厚生長官就任の是非をめぐる議論で、中絶政策は最も注目されている争点の一つである。
2023年、ケネディ氏は「セージ・スティール・ショー」で、「中絶は女性の選択に委ねるべきであり、政府が関与すべきではない」と発言。直後に「たとえ妊娠後期であっても」と付け加えた。
しかし、その数日後に立場を修正し、「中絶は一定の時点までは制限なく認められるべきだ」が、アメリカにおける中絶を「強制ではなく選択によって」減らす政策を提唱した。
昨年、ケネディ氏は大紀元に対し、「個人的には中絶が好きではないが、政府が人々の身体に対する管轄権を持つべきではない」と述べている。
元副大統領のマイク・ペンス氏は、ケネディ氏の中絶に対する姿勢を理由に、「共和党上院議員は彼の承認に反対すべきだ」と主張した。
ペンス氏の設立した保守派団体「アドバンシング・アメリカン・フリーダム(Advancing American Freedom)」は、ケネディ氏の厚生長官指名に強く反対しており、1月には上院議員に対し、承認を否決するよう求める書簡を送った。
共和党議員との協議とトランプ政策への支持
ケネディ氏は昨年12月に共和党上院議員らと会談し、トランプ政権の政策を支持する意向を示した。
12月17日、ジョシュ・ホーリー上院議員はXに、「ケネディ氏は、トランプ政権のプロライフ(反中絶)政策をHHSで復活させると約束した」と投稿した。
ホーリー氏によると、ケネディ氏は「メキシコシティ政策の復活」(海外の中絶支援団体への米政府資金提供の禁止)および「米国内での中絶への納税者資金の流用停止」に同意したという。
また、ケネディ氏は「中絶を推進する組織への『タイトルX』資金の供給を禁止する」方針を支持すると述べ、HHSの全副長官がプロライフ政策を支持する人物であることを保証すると約束した。
ホーリー氏は、「彼は、米国の中絶件数が多すぎると考えており、この国が自由世界の道徳的リーダーであり続けるためには、現在の中絶率の高さを是正しなければならないと語った」と投稿した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。