中国共産党の脅威を抑止 フィリピンがタイフォン・ミサイル配備 日本のミサイル防衛は? 

2025/01/30
更新: 2025/01/30

論評

中国共産党(中共)が強い関心を示しているのが、米国の「タイフォン(Typhon)」中距離ミサイル発射システムのフィリピン配備である。米国は2024年12月、このミサイルシステムをフィリピンに交代制で配備した。

タイフォン・システムは、飛行速度は遅いが射程距離が長いトマホーク巡航ミサイルと、対地・対空・弾道ミサイル迎撃能力を備えた「SM-6」ミサイルを組み合わせたものだ。トマホークは飛行速度は遅いものの、一部の派生型では最大1550マイル(約2500キロ)の射程を誇る。一方、SM-6は高速で、射程200マイル(約320キロ)以上の標的を攻撃できる。ミサイルは大型トラックが牽引する輸送コンテナのようなものに収められている。

中国の反発とフィリピンの対応

中共はこの動きに強く反発している。中共外交部の毛寧報道官は声明で、「フィリピンがアメリカと協力しタイフォンを導入することで、自国の安全保障と防衛を他国に委ねることになり、地域に地政学的な対立と軍拡競争のリスクをもたらしている」と批判した。

タイフォンのフィリピン配備は、同国と中国がフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内の環礁をめぐり対立を深める中で行われた。

地域の安全保障環境における重要な動き

アメリカ陸軍はフィリピンへのタイフォン部隊の配備に加え、フィリピン軍自らも同ミサイルシステムの導入に関心を示している。フィリピン政府はタイフォンの配備を擁護し、ギルベルト・テオドロ国防相は「フィリピンの安全保障と防衛に関する装備の配備や調達は、主権国家としての権限に基づくものであり、いかなる外国の干渉も許されない」と述べ、中共の批判に反論した。

ルソン島(フィリピンの主要北部島)からの射程を考慮すると、タイフォンは海南島や中国本土奥深く、さらには上海北部にまで到達する可能性がある。アメリカがこのような地上発射型巡航ミサイル(GLCM)を配備するのは、1980年代のレーガン政権時代に欧州へのGLCM配備を提案して以来のことだ。

当時、GLCMと「パーシングII」核ミサイルの配備計画はソ連を交渉の場に引き出し、最終的に「中距離核戦力(INF)全廃条約」の締結につながった。今回配備されたタイフォンは核兵器を搭載しないが、フィリピンなどの地域パートナーへの共有が検討されている点で、戦略的に大きな意味を持つ。

かつてアメリカは、西ドイツとパーシング1Aミサイルを共有し、核弾頭の管理権を米国が保持していた。タイフォンのフィリピン共有は、地域の安全保障にとって重要な動きであり、同国にとって前例のない長距離攻撃能力をもたらすことになる。

日本の長距離ミサイル基地設置

日本は台湾から約130キロに位置する南西諸島に前線基地を設置しており、現在、石垣島には改良型「12式地対艦誘導弾(Type 12)」を配備し、その射程を約800マイル(約1300キロ)に延長する計画を進めている。これはルソン島のタイフォン・ミサイルと射程が重なり、相互補完的な防衛態勢を構築するものとなる。

また、日本は「トマホーク」の購入契約をアメリカ政府と締結した。抑止力をさらに強化する見通しだ。アメリカがトマホークを供与する国は、英国、オーストラリア、日本に限られている。加えて、日本は「SM-6」ミサイルも購入している。これによりタイフォン・ミサイルシステムを構成する2種類のミサイルをすでに取得していることになる。

クリスティン・ウォームス元陸軍長官は、アメリカとしては「多領域任務部隊(MDTF)」を日本で運用することに関心を持っていると述べた。この部隊はタイフォン・ミサイルシステムを運用する陸軍部隊である。

多領域任務部隊(Multi-Domain Task Force)はアメリカ陸軍が現代戦に適応するために2017年に創設した部隊。従来の陸海空に加え新たな領域の宇宙や情報戦などの能力も持つ。

日本の軍事関係者は、米ワシントン州フォート・ルイスに駐留する多領域任務部隊を視察しており、日本政府がトマホークとSM-6をタイフォンと同様の構成にすることや、トラック搭載型タイフォン・システムを直接導入する可能性も示唆されている。いずれにせよ、中国の台湾侵攻や地域での軍事行動を抑止するためのミサイル抑止連携が強化されつつあるのが現実だ。

中国の対抗措置の可能性

このような対中抑止力の高まりと同時に、中国政府は、西太平洋で発展しつつある抑止力の射程距離のファンをかわすために、同時に対抗策を講じている可能性がある。

中国に対する抑止力の強化が進む中で、中国政府は同時に対抗策を講じ、西太平洋における抑止の拡大を牽制しようとしている可能性がある。2023年6月、中国政府はキューバにおける軍事訓練施設および軍事補給拠点を設置する計画を発表した。キューバはフロリダ州からわずか約145キロ南に位置する。

これは中国共産党が進める「プロジェクト141」の一環であり、世界規模での軍事支援拠点の構築を目指すものだ。これまでにカンボジア、ジブチ、アラブ首長国連邦(UAE)などで同様の施設が確認されているが、キューバの施設は中国軍にとって初のアメリカ大陸での拠点となる可能性がある。さらに、中国政府の「軍民融合」戦略の一環として、パナマ、ベネズエラ、バハマにおける中国の影響力拡大も懸念されている。

2023年、バイデン政権はキューバに中国のスパイ基地が存在することを認めた。共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、2016年の大統領選挙期間中にも、中国のキューバ進出について警告を発しており、キューバ政府に対し「ベフカル(Bejucal)の中国の盗聴基地を閉鎖するよう」求めた。

ベフカルは1962年のキューバ危機の際、ソ連の核兵器が隠されていた貯蔵施設の一つとしても知られている。最近では、ベフカル以外、中国のスパイ基地はキューバ国内に少なくとも4つ以上存在することが判明した。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ジョン・ミルズ大佐(退役)は、冷戦、平和の配当、対テロ戦争、混沌とした世界、そして現在は大国間の競争という 5 つの時代に勤務した国家安全保障の専門家です。彼は国防総省のサイバーセキュリティ政策、戦略、国際問題担当の元ディレクターです。ミルズ氏は、安全保障政策センターのシニアフェローです。彼は「The Nation Will Follow」と「War Against the Deep State」の著者です。ColonelRETJohn2 on “X”、ColonelRETJohn on Substack、GETTR、およびTruth Social