米国のIT大手マイクロソフトと人工知能(AI)企業オープンAIが、中国のAIスタートアップ企業ディープシークに関連する人物らによるデータの不正取得疑惑について調査を開始した。この問題は、急速に発展するAI技術分野における米中間の激しい競争と、データの適切な利用に関する倫理的問題を浮き彫りにしている。背景には、ディープシークが発表した高性能AIモデル「R1」があり、米国AI企業の株価急落や国家安全保障上の懸念を引き起こしていると言われている。
米経済紙ブルームバーグの2025年1月29日の報道によると、マイクロソフトのセキュリティ研究者が2024年秋、ディープシークと関連があるとみられる複数の人物が、オープンAIのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を使用して大量のデータを流出させているのを確認したそうだ。
APIは、ソフトウェア開発者がオープンAIの独自AIモデルを、自社のアプリケーションに統合するためのツールで、使用にはライセンス料が必要となる。マイクロソフトの研究者らは、この活動が、オープンAIの利用規約に違反する可能性があると指摘している。
この問題が浮上した背景には、ディープシークが2025年1月に発表した新しいAIモデル「R1」がある。同社はR1が人間の推論方法を模倣でき、米国の主要企業が開発したAIモデルと同等かそれ以上の性能を持つと主張している。しかも、その開発コストは米国企業の製品と比べてはるかに低いとされていると言う。
この発表を受け、マイクロソフト、エヌビディア、オラクル、アルファベットなど、AI関連の米国テクノロジー企業の株価が急落し、合計で約1兆ドルの時価総額が失われたと報じられている。
米国政府も事態を重く見ており、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)が、ディープシークのAIが米国の安全保障に与える影響について調査を開始したと発表している。
一方、ディープシークの創業者であるリャン・ウェンフォン氏は、これらの疑惑を強く否定し、西側メディアによる組織的な中傷だと主張している。
オープンAIの広報担当者は、「中国を拠点とする企業やその他の企業が、米国の主要AI企業のモデルから知識を抽出しようとしていることは承知している」とコメントし、「最も高度なモデルを保護するために米国政府と緊密に協力していくことが極めて重要だ」と述べている。
この問題は、急速に発展するAI技術分野における国際競争の激化と、データの適切な利用に関する倫理的問題を浮き彫りにしている。今後の調査結果が注目される中、AI技術の開発と利用に関する国際的なルール作りの必要性が、改めて認識された。
AI分野は米中対立の主戦場
AI分野は米中対立の主戦場となっている。両国がAI技術の覇権を巡って激しい競争を繰り広げている状況が見て取れる。
AI開発競争の背景
米中両国は、AIが経済成長や軍事力強化に大きな影響を与えると認識している。そのため、AI技術の開発と応用において世界をリードしようと、激しい競争を展開している。
技術開発競争
米国はOpenAIやGoogleなどの民間企業を中心にAI開発を進めているのに対し、中国は国家主導で大規模な投資を行っている。両国とも、AIの性能向上に不可欠な半導体技術の開発にも力を入れている。
輸出規制
米国は中国のAI開発を抑制するため、先端半導体の対中輸出規制を強化している。これに対し中国は、国産半導体の開発を加速させる動きを見せている。
データ収集と利用
中国は膨大な国内データを活用してAIを学習させる優位性がある一方、米国は個人のプライバシー保護の観点からデータ利用に制限がある。
対立の影響
この競争は単なる技術開発にとどまらず、世界の政治経済秩序にも影響を及ぼしている。AI技術の覇権を握ることが、将来の国際社会における影響力の源泉になると、両国が認識しているためだ。
今後の展望
米中のAI競争は、今後も激化すると予想されている。しかし、AIの潜在能力を最大限に引き出すには、国際的な協力が必要であり、両国の対立が、AI開発の進展を阻害する可能性も指摘されている。
このように、AI分野は確かに米中対立の主戦場となっており、その影響は技術開発にとどまらず、国際政治や経済秩序にまで及んでいる。米中両国の動向が、世界のAI開発の行方を左右する状況が続くと考えられていると言う。
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