フィリピン当局 中国籍5人をスパイ容疑で逮捕

2025/01/31
更新: 2025/01/31

フィリピン当局は今月初め、中国人男性をスパイ容疑で逮捕したが、その後、1月30日に新たに中国籍の5人を違法な情報収集活動の疑いで逮捕したと発表した。

この一連の逮捕は、南シナ海の戦略的に重要な島嶼や海域をめぐるフィリピンと中国の対立が激化する中で行われた。

スパイ容疑で中国籍5人を逮捕

フィリピン国営通信(PNA)によると、フィリピン国家捜査局(NBI)の特別作戦部隊が逮捕を実行した。逮捕された容疑者は以下の通り。

  • Cai Shaohuang(リチャード・タン・チュア)—組織のリーダーとされる
  • Cheng Hai Tao(チェン・ハイタオ)
  • Wu Cheng Ting(ウー・チョンティン)
  • Wang Yong Yi(ワン・ヨンイー)
  • Wu Chin Ren(ウー・ジンレン)

無人機を使い軍事施設を偵察

フィリピン国家捜査局のハイメ・サンティアゴ局長は記者会見で、「彼らは無人機を使用し、スプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)に最も近い主要な陸地であるパラワン州の軍事施設を記録していた」と説明した。標的となったのは以下の施設だったという。

  • フィリピン海軍の部隊
  • 沿岸警備隊の艦船
  • 空軍基地
  • 海軍基地
  • 造船所

海産物の買い付けを装い偵察活動

フィリピン当局によると、この5人は頻繁に「海産物の買い付け」を装い、パラワン島のウルガン湾を訪れていた。実際には、フィリピン海軍の戦略拠点であるオイスター湾海軍基地を空中から監視し、画像情報を収集していたという。この基地は南シナ海に近く、フィリピン海軍にとって極めて重要な戦略拠点とされる。

押収された証拠:軍事施設の画像と地形図

容疑者のスマートフォンを解析したところ、以下の画像や動画データが保存されていたことが判明した。

  • ブリルヤン港の沿岸警備隊施設や艦船
  • 海軍艦艇および軍事基地の画像
  • フィリピン海軍のデル・ピラール級フリゲート艦PS16の高解像度画像

さらに、スービック湾国際空港やスービック湾海軍基地の詳細な地形図が中国語の注釈付きで保存されており、計画的な偵察活動の可能性があるとみられる。また、フィリピン沿岸警備隊が保有する2隻の沖合哨戒艦(OPV)の映像データも見つかった。

朝日新聞によると、見つかった監視カメラは高解像度で、夜間でも監視が可能な「軍用級」のもので、インターネットで遠隔操作やデータの送受信が可能だという。

ブリルヤン港の近隣には、フィリピン海軍のオイスター湾海軍基地がある。この基地は南シナ海に面し、戦略的に重要な拠点とされる。ブリルヤンから約30キロ離れたバラバク島には、米軍が使用する大型滑走路や軍事物資の貯蔵施設が整備されており、戦略上の要衝となっている。

すでに逮捕された中国人スパイの仲間か

国家捜査局の報告によると、今回逮捕された5人は、1月17日に逮捕された中国籍の Deng Yuanqing(デン・ユエンチン) とそのフィリピン人共犯者を監視する中で浮上した。

サンティアゴ局長は、「デンは以前からフィリピン当局が追跡していたスパイ組織の一員であり、昨年12月にフィリピン海軍情報部門から『中国のスパイがフィリピン国内で監視活動を行っている』との情報提供を受けていた」と明かした。

フィリピンの ABS-CBNテレビ によると、地元当局者は「バラワン州とマニラでスパイ活動の疑いにより逮捕された5人の中国人のうち、一部は観光客を装っていた」と明らかにした。

中共大使館の反応とフィリピン政府の対応

中国共産党(中共)政権は、デンに対するスパイ容疑について「根拠のない憶測と主張」だとし、中共大使館は彼への領事アクセスを要求している。今回の新たな逮捕に関しては、コメントを控えている。

フィリピン国家安全保障会議のジョナサン・マラヤ報道官は29日、南シナ海問題に関するフォーラムで「中国による広範な情報収集活動が確認されている」と発言した。

また、フィリピン軍と国家捜査局は、外国のスパイネットワークを壊滅させるために対スパイ活動を強化している。サンティアゴ局長は「フィリピン海軍の作戦部隊と協力し、国家安全保障に関する機密情報を取得しようとする試みを阻止する。監視を強化し、スパイ活動を阻止する」と強調した。

当局は今後、大規模な逮捕作戦を展開する方針であり、フィリピン国内に潜伏する外国のスパイネットワークに対する取り締まりを加速させる構えだ。

 

李皓月