イギリスのピーター・カイル科学技術相は1月29日、ブリュッセルでのインタビューに応じ、「私たちはDeepSeekの規模と影響を慎重に審査し、関連する制度に適合しているかを確認する」と述べた。
中国企業 DeepSeek は今月、AIモデル「R1」を発表した。このAIはOpenAIのChatGPTと競争できるとしており、訓練コストはChatGPTの数分の一に抑えられているという。この無料アプリはリリース後、App Storeランキングで首位に躍り出た。ChatGPTやGoogleのGeminiを上回るダウンロード数を記録し、急速に関心を集めている。
しかし、このAIの登場はシリコンバレーで警戒感を引き起こし、中国共産党(中共)が世界の技術競争でリードする可能性について懸念を生んでいる。
「イギリス国民に安心を」—政府はDeepSeekを精査中
現在、イギリス政府はDeepSeekのアプリケーションが国家安全保障に与える影響について審査を進めている。
カイル大臣は、「イギリスには非常に成熟した情報機関と安全保障機関がある」と述べた。
「新しい技術や製品が次々と登場するのは、グローバル経済の中では当然のことだ。ただ、私はイギリス国民に安心してほしい。私たちの制度は、他の技術革新と同様にこの問題にも対応し、安全性を確保しながら進めていく」と強調した。
カイル氏は調査の詳細には触れなかったが、イギリス国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)が技術リスクを分析することは確実視されている。NCSCは政府通信本部傘下の監視機関であり、国家のサイバーセキュリティ対策を担っている。
イノベーションの重要性
カイル大臣は、DeepSeekの急成長には懸念があるものの、一方では「イノベーションの重要性を改めて示すものだ」と評価した。
また、カイル氏は同日、レイチェル・リーブス財務相 が発表した成長重視の人工知能政策について言及した。
「これがまさに、なぜイギリスがAIアクションプランを立ち上げ、デジタル能力を強化しようとしているのか、なぜケンブリッジ大学とオックスフォード大学の連携を強化しようとしているのか、そして世界最大級のイノベーション拠点を構築しようとしているのかを示している」と語った。
世界各国がDeepSeekを調査—国家安全保障とデータ保護の懸念
DeepSeekの急成長は、アメリカの国家安全保障機関を含む各国政府の関心を集め、イタリア、ドイツ、オーストラリア、アイルランドなどのデータ保護当局による調査の対象となっている。
アメリカ
アメリカのニュースの信頼性を評価する機関NewsGuardの調査によると、DeepSeekは「同類のチャットボットの中で最も信頼性が低い」と評価した。
また、調査では、DeepSeekの回答の一部が「中国政府のプロパガンダを反映している」ことも判明した。
29日、ニューヨークを拠点とする サイバーセキュリティ企業Wiz は、「DeepSeekの大量の機密データが誤って公開インターネット上に露出していた」と発表し、データセキュリティに対する懸念をさらに強めた。
イタリア
イタリアのデータ保護当局 Garante は28日、「DeepSeekに対し、収集した個人データの詳細、データの出所、使用目的、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)に基づく法的根拠、さらにデータが中国国内のサーバーに保存されているかどうかの情報を提出するよう要請した」と発表した。DeepSeekには20日以内の回答が求められている。
ドイツ
ドイツのデータ保護機関もDeepSeekに対する懸念を示し、「まずは正式な調査を開始し、データ処理の手法を精査する」と報じられている。ドイツの「時(Zeit)」紙
オーストラリア
28日、オーストラリアの エド・ヒューシック産業・科学大臣は、DeepSeekのデータプライバシー管理に懸念を表明し、オーストラリアの消費者に対し「ダウンロードする際には慎重になるべき」と警告した。
ヒューシック大臣は オーストラリア放送協会(ABC) の取材に対し、次のように述べた。
「品質、消費者の好み、データ管理、プライバシーに関する多くの疑問がある場合、私は慎重な対応を取る。こうした問題は軽視されるべきではなく、慎重に検討する必要がある」
また、「中国企業のデータ管理手法は、西側の競合企業と異なる場合がある」と指摘した。
アイルランド
29日、アイルランドのデータ保護委員会(DPC) も声明を発表し、「DeepSeekに対し、アイルランド国内でのデータ処理に関する詳細な情報を提出するよう要請した」と述べた。
各国の監視対象となるDeepSeek
DeepSeekの登場は、AI技術の進歩における中共の影響力を浮き彫りにし、同時にデータセキュリティやプライバシー保護の重要性を改めて問い直す事態となっている。
各国の監視機関は、DeepSeekのデータ処理の透明性、ユーザーのプライバシー保護、国家安全保障への影響を慎重に評価し、必要な措置を講じる構えだ。
今後、DeepSeekに対する調査結果や規制の動向が、AI業界全体にどのような影響を及ぼすのか、注目が集まる。
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