「今日の稼ぎは、また罰金で消えた……」
そんな嘆きが、中国の貨物車ドライバーたちの間で日常になっている。
経済の低迷、激化する競争、そして不当な罰金――彼らの生活はますます厳しくなっていると言う。必死に働いても手元に残る金はわずかで、SNSで助けを求めても、その声は政府によってかき消されてしまう。それでも、生活のためにハンドルを握り続ける運転手たち。しかし、その先に待っているのは、さらなる苦境かもしれない。
彼らを本当に苦しめているのは何か?
「全国規模のストライキ」
これまでも全国各地のトラック運転手たちは、SNSなどを通じて「生活が苦しい」とその窮状を訴えてきたが、そういった声は往々にして封殺され、また実際にストライキなど抗議を行えば高圧的に完全鎮圧されてしまう。
一部の貨物運転手は、当局による恣意的な料金徴収や罰金に抗議し、賃上げを求めて、「全国規模のストライキ(3月1日決行)」を計画し、連帯を呼びかけた。
しかし、そのストライキは大規模な広がりを見せることなく終息した。

一部の貨物車ドライバーは、エポックタイムズに対し、彼らが直面する過酷な現実について訴えた。
業界十年以上の広東省佛山市の趙赫(仮名)さんの場合、「ストライキは、全国規模でやらないと効果がない。我々は仕事を休んだぶんだけ収入がなくなる、生活もかかっているのだから、ストライキなど安易にできない」と厳しい現実を語った。
ここ十数年、中国の貨物運送市場は、トラック配車アプリ「貨拉拉(からら)」や「運満満(うんまんまん」によって独占されている。そういったプラットフォームから仕事をもらおうと運転手たちは、請負金額をどんどん下げるしかなく、競争は激しさを増すばかりだ。
趙赫さんによると、「以前は100キロ走ったら450元(約9千円)もらえていたが、今は170~280元(約5千円前後)と半分以下になった。そしていまは、ドライバーが溢れているから、目を疑うほどの安い仕事でも受ける人がいる」と言う。
広東省深圳市で「貨拉拉」から注文をもらう運転手の陳龍(仮名)さんは、エポックタイムズに対し、「今、多くの貨拉拉の運転手は、車を売って辞めたよ」と明かしている。

運転手たちは安い賃金と厳しい競争などに加え、いつどこで科されるかもわからない高額な罰金にも苦しめられていると言う。
中国の検査スポットでは、何も積んでいないにもかかわらず、「最大積載量超えた」と表示される不思議な重量測定計は、都市伝説ではなく、本当に実在する。たびたび、ニュースになっているが、運悪くこれに出会ってしまったら罰金切符を切られてしまう。ドライバーは泣き寝入りするしかない。
2024年12月5日、河南省鄭州市の陸橋の上で取り締まりに出くわして、警察に追われた貨物運転手は橋から飛び降りて命を絶った。現地では貨物車の陸橋への乗り上げを禁止している。この場合、違反者は100元(約2千円)の罰金と1点減点と現地警察は主張しているが、「実際には数千元(数万円)罰金とられて6点減点される」とのネット情報もある。
2021年4月5月、河北省常州市で貨物車運転手の金德強さん(51歳)は、設置を義務付けられている中国版GPS「北斗システム(走行ルートや走行時間などを監視)」がオフラインであったため、車の押収および罰金2千元を言い渡され、農薬を飲んで抗議自殺した。
抗議自殺のほかにも、過労死が疑われる突然死のケースも相次いでいると言う。

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