【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

日本にはスパイ防止法が存在しない その理由と背景と影響と課題

2025/03/16
更新: 2025/03/16

日本には、外国の諜報活動やスパイ行為を直接取り締まる「スパイ防止法」が存在しない。この状況は世界的に見ても珍しく、他国では一般的なスパイ防止法が日本では未だに制定されていない理由には、歴史的・政治的な背景がある。しかし、昨今の日本を取り巻く安全保障リスクの高まりから、同法制定の議論は避けられない状況だ。

スパイ防止法がない理由と背景

戦前の特高警察への懸念

戦前の日本には特高警察(特別高等警察)が存在し、国体護持のために共産主義者や社会主義者、無政府主義者、過激な国家主義者などを取り締まっていた歴史がある。この経験からスパイ防止法の制定が「表現の自由」や「報道の自由」を侵害する可能性があるという主張がある。

憲法との衝突

日本国憲法第21条で保障されている「表現の自由」に抵触するとの批判がある。1985年に自由民主党がスパイ防止法案を提出した際も、マスコミや野党から強い反対を受け、廃案となった経緯がある。

政治的対立

スパイ防止法案は過去に何度か議論されたものの、日本社会党、公明党、日本共産党などによる審議拒否や反対運動によって成立には至らなかった。これらの勢力は、国家権力による監視強化や人権侵害につながる可能性を指摘していた。

代替法の存在

日本では、自衛隊法、国家公務員法、特定秘密保護法などが存在し、それらによって一定程度の情報漏洩や安全保障上のリスクを抑制している。しかし、これらはスパイ行為そのものを取り締まるものではなく、抜け穴が多いとされている。

スパイ防止法がないことによる影響

諜報活動への対応不足

諜報活動を直接取り締まる法律がないため、日本では外国のスパイ行為に対して窃盗罪や不正競争防止法など一般刑法で対応するしかない。その結果、現行犯逮捕が必要となり捜査効率が低下している。

抑止力の欠如

他国ではスパイ罪に死刑や無期懲役など重い罰則を設けており、それ自体が抑止力として機能している。一方、日本では刑罰が軽く、摘発されたスパイが執行猶予付きで出国するケースも見られる。

国際的な孤立

世界各国では諜報機関(CIA(米), MI6(英),SVR(露)など)とともにスパイ防止法を整備し、国家機密を守る仕組みを構築している。しかし、日本はそのような法律も機関も欠如しており、防諜面で脆弱性を抱えている。

今後の課題

日本においてスパイ防止法の必要性は、安全保障環境の変化に伴い議論が高まっている。近年、中国共産党やロシア、北朝鮮をはじめとする諸外国による諜報活動が活発化しており、日本企業や政府機関から重要情報が漏洩するリスクが指摘されている。このような状況に対応するため、いくつかの課題が挙げられる。

まず、スパイ防止法を制定する際には、「表現の自由」とのバランスをどのように確保するかが重要である。戦前の特高警察による取り締まりの歴史がある日本では、国家権力による監視強化への懸念が根強い。そのため、国民の基本的人権を侵害しない形で法律を整備するためには、厳格な審査基準や透明性のある運用体制が求められる。

また、安全保障上の必要性について国民的な議論を深めることも課題である。過去にはスパイ防止法案に対して強い反対意見が存在したが、現代の国際情勢や技術革新によるリスク増大を踏まえ、国民全体でリスクと対策について理解を共有することが必要とされる。

さらに、他国と同様にスパイ行為への厳罰化を進めることも検討事項として挙げられる。多くの国ではスパイ行為に対して重い刑罰を科すことで抑止力を高めている。日本においても国際基準に適合した法律を整備し、安全保障体制を強化することで、諜報活動への脆弱性を克服することが期待されている。

日本にスパイ防止法がない状況は、安全保障上大きな課題となっている。今後、この問題への対応は国家として避けて通れないテーマと言える。

大紀元エポックタイムズジャパン記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。