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どうなるウクライナ停戦 プーチン氏の言う「紛争の根本原因」とは何か

2025/03/18
更新: 2025/03/19

ロシアのプーチン大統領は3月13日、ウクライナとの停戦協議に関連し、「紛争の根本原因に対処する必要がある」と述べた。

具体的には「ウクライナの非軍事化」「NATO加盟の永久放棄」「クリミア半島のロシア編入承認」などを要求している。一方でゼレンスキー大統領は「停戦後は領土問題が最も困難な問題になる」と述べ、領土問題について難しい協議が必要になるという見解を示し、ウクライナ停戦交渉は難航している。

プーチン大統領の言う「紛争の根本原因」とはなにか。バイデン米政権やEU諸国、ウクライナはプーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼び、各国メディアもほぼ同じ見方をしている。

しかしウクライナ紛争に至るまでの経緯は西側首脳や多くのメディアは語っていない。

冷戦後のNATO拡大とロシアの反発

1999年のドイツ再統一時、西ドイツのハンス=ディートリヒ・ゲンシャー外相は「NATOは東方に拡大しない」と発言し、ソ連側に安心感を与えたとされる。

というのもロシアは、NATOの東方拡大を自国の安全保障に対する直接的な脅威とみなしていた。2015年に改訂された「ロシア連邦の国家安全保障戦略」では、「同盟の軍事活動の増大、その軍事インフラのロシア国境への接近、ミサイル防衛システムの構築、国際法規に反する形で実現されている同盟のグローバル化の試みが、ロシアにとって容認できないということが、NATOとの関係を規定する要素であり続ける」と記されている。

ロシアにとってNATOは冷戦時代の軍事同盟であり、ロシアを敵視しており、NATOがロシア国境に接近すれば、ミサイル配備などで戦略的優位を失うとの危機感をもっている。

しかし現実はゲンシャー外相がNATOが東方に拡大しないと言った言葉とは裏腹に、1999年ポーランド、ハンガリー、チェコ、2004年にはバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)や東欧諸国が加盟した。

ロシア政府はこの拡大を「西側の約束違反」と批判。2008年にはウクライナのNATO加盟が検討されると、当時のプーチン大統領が「レッドラインを越える」と警告するなど、緊張が高まっていた。  

マイダン革命

その後、2010年ウクライナで親ロ派のヤヌコーヴィチ大統領が当選し、「NATO加盟を当面目指さない」と宣言していたが、2014年に親ロ政権が崩壊し(マイダン革命)、クリミア併合後、ウクライナは再びNATO加盟を目指す方針に転換した。

これに反発したロシアは、2014年3月にクリミアを占領・併合。ウクライナ東部の親ロ派武装勢力(ドネツク・ルガンスク人民共和国)が分離独立を宣言し、ウクライナ政府軍との戦闘が激化した。

フランス、ドイツ、ウクライナ、ロシア(ノルマンディー・フォーマット)が仲介し、停戦合意(ミンスク1合意)を成立したものの、戦闘は収まらず、親ロ派が攻勢を続け、ドネツク空港などで激しい戦闘が続いた。

2015年1月、親ロ派がウクライナ軍を大規模に攻撃し、ドネツク空港などの要衝を制圧。ウクライナ軍は敗北を重ねた。

2015年2月、ウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領が再び交渉し、「ミンスク2合意」が成立。

この合意では、ロシア人が多く住むウクライナ東部の自治権拡大とロシア軍の撤退が定められたが、実施段階で対立が続いた。  

西側諸国は「ロシアが親ロシア派武装勢力を支援し、合意を妨害した」と主張。一方、ロシア側は「ウクライナが政治改革を怠った」と反論している。

その後、西側諸国とロシアとの緊張は高まり続け、2019年にはNATOがポーランドやバルト三国に米軍部隊を駐留させ、2022年にはロシアとの国境が長いフィンランドがNATOに加盟した。

プーチンの言う「紛争の根本原因」とは

ロイター通信によると、2022年12月9日、プーチン氏はミンスク2合意について、ウクライナ侵攻直前の、同合意を仲介した独仏はロシアを裏切り、現在はウクライナに武器を供給していると非難している。

「ミンスク(修正)合意の枠組みの中で合意できると考えていたが、信頼の問題がある」とし、西側諸国に対する「信頼はほぼゼロに近い」とした。

ドイツのメルケル前首相も日付の独誌ツァイトに掲載されたインタビューで、ミンスク合意はウクライナが防衛力を強化する「時間を確保する」ものだったと発言。プーチン氏は9日、訪問先のキルギスで行った記者会見で、メルケル氏の発言に「失望した」と語った上で、「誰もミンスク(修正)合意を履行するつもりがないことが分かった。要はウクライナに兵器を供給し、敵対行為に備えるだけだった」と語った。

これらの紆余曲折がありながらも解決しなかった現状にプーチン大統領は「紛争の根本原因に対処する必要がある」と述べたのだと思われる。

ウクライナ侵攻について、日本の自衛隊の「令和4年版防衛白書 第1部 第2章 3 ウクライナ侵略の経過と見通し」には以下のように記されている。

「ロシアによる侵略に至るまでの背景としては、NATOの東方拡大に対する脅威認識をはじめとする政治的な要因が指摘されている。特に、ウクライナやジョージアが他の中・東欧諸国やバルト三国に続いて自らの意思でNATOに加盟すれば、ロシアは西部国境におけるNATOとの緩衝地帯をさらに喪失することや、ウクライナのNATO加盟の見通しが立たない状況でも、加盟の意思を持ってNATOとの協力を進展させることでウクライナ軍の能力及びNATOとの相互運用性が実質的に向上すること自体が、ロシアにとって自らの「勢力圏」としてのウクライナの位置づけが危ぶまれ、容認できなかったとの見方がある」。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。