【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

日中韓外相会議 未来志向の協力推進と首脳会議早期開催で一致 日中間の問題には沈黙

2025/03/22
更新: 2025/03/22

2025年3月22日午前、東京都港区の外務省飯倉公館において、第11回日中韓外相会議を開催した。日本、中国、韓国の外相が出席し、地域および国際的な課題への対応を協議するとともに、未来志向の協力を推進することで一致した。また、日中韓首脳会議を早期に日本で開催するための調整を加速することを確認した。

会議には日本の岩屋毅外務大臣、中国の王毅(おう・き)外相、韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)外相が参加し、約80分間にわたり意見交換が行われた。岩屋外相は冒頭、「国際情勢がますます厳しさを増す中で、分断と対立を克服するための対話と協力がこれまで以上に重要である」と述べ、3か国間の連携強化を訴えた。

今回の会議では少子高齢化や経済交流など、共通課題の対応について話し合われたほか、北朝鮮による核・ミサイル開発や露朝軍事協力への懸念も共有した。岩屋外相は北朝鮮の非核化を3か国共通の目標とし、国連安保理決議の完全履行に向けて緊密な意思疎通を図る意向を示した。また、日本側は拉致問題解決への協力も改めて求めた。

さらに、ウクライナ情勢や東アジア地域協力についても意見交換が行われた。岩屋外相は「力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められない」と述べ、平和と安定を訴えた。王毅外相は今年が「抗日戦争勝利80年」であることに触れ、「歴史を直視することで未来を切り開くことができる」と発言した。

この会議は2023年11月に韓国・釜山での開催以来となる。3か国の外相は、次回の日中韓首脳会議に向けて具体的な成果を得るため調整を加速することで一致した。また、人々の交流拡大や経済協力の深化に向けた取り組みも確認した。

日中間の山積した問題には沈黙

日中韓外相会議で、日本が中国との未解決問題について具体的に一切言及しなかった点は、注目すべき事実である。日本と中国の間には、中国による日本人の拘束、東シナ海での資源開発や尖閣諸島を巡る領土問題など、深刻な懸案事項が山積している。しかし、今回の会議ではこれらの問題について直接触れることはなく、未来志向の協力や地域安定を強調するにとどまった。

中国はこれまで、尖閣諸島周辺で中国公船の活動を頻繁に行っており、日本の安全保障に対する懸念を高めている。これらの問題は、日中関係における緊張を象徴するものであり、日本国内でも強い関心が寄せられている。しかし、今回の会議ではこれらの具体的な課題には触れず、共通課題への協力や経済交流の深化といった抽象的なテーマに終始した。

このような姿勢は、中国共産党(中共)政権の側にとって有利に働く可能性がある。具体的な問題が議論されないことで、中共は自身の立場を維持しつつ、日本との関係改善をアピールする余地を得たと言える。特に、中国は経済協力を通じて日本からの投資を引き込みたい意図を持っており、そのためには対立よりも協調姿勢を強調する方が有効である。

一方で、日本がこれらの懸案事項に言及しないことは、国内外で批判的な視点を招く可能性がある。日本国内では、中国との問題解決を求める声が強い中で、政府が具体的な対応を示さないことへの不満が高まる恐れがある。また、国際社会では、日本が中共政権との対立を避けるために重要な問題に触れない姿勢を、弱腰外交と捉える可能性もある。

日中間の未解決問題について議論しないことは短期的には関係改善への道筋を作るかもしれないが、長期的には問題解決を遅らせる結果となりかねない。

日本は中共を利する発言に注意すべき

外務省がウェブサイト上で発表した会議内容によると、「3外相は、現下のウクライナ情勢に関しても意見交換しました。その中で、岩屋大臣から、力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであれ認められないことを一致して訴えていく必要がある旨を述べました」とある。

「力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められない」という表現を使用したことは、中国に対するメッセージも含まれているとする解釈が可能である一方で、その言葉が台湾問題に関して曖昧さを残す可能性もある。このフレーズは一般的に国際秩序や法の支配を支持する立場を示すものであり、ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の挑発行動など、さまざまな国際問題に適用される。そして特に使われるケースは、中共が台湾侵攻を実行する意図に対してだ。しかし、中国が台湾政策を「国内問題」と位置づけている以上、この言葉が台湾問題に直接適用されることを中国は否定する立場にある。

そのため、日本がこの表現を中国の外相を目の前にして、公式の場で使用することで、結果的に中国に対して「この言葉は台湾問題には当てはまらない」というイメージを醸成する可能性がある。

中国は台湾を「不可分の領土」と主張しており、台湾への軍事行動を正当化する論理を展開している。その状況下で、日本がこのフレーズを広義の国際秩序維持という文脈で使用すると、中共側がこの言葉を自国の主張と矛盾しない形で解釈し、台湾侵攻への批判を回避する材料として利用するリスクがある。

さらに、日本が日中韓という枠組みでこの表現を用いることは、中国との協調姿勢を強調する一方で、台湾問題に関して明確な立場を示さないという印象を与える可能性もある。アメリカやヨーロッパ諸国が「力による一方的な現状変更」を台湾問題に結びつけて強く非難している中で、日本が曖昧な立場を取ることは、国際社会における日本の姿勢への疑念を招く恐れもある。

この点について、日本は慎重な外交的配慮、台湾海峡の平和と安定という国際社会全体の利益にも配慮する必要がある。今回の発言が中共側に利用される結果となれば、日本は意図せず中共の戦略に一役買う形となりかねない。このようなリスクを踏まえた上で、今後の外交メッセージの発信にはより明確な立場と戦略的配慮が求められると言える。

王毅の「抗日戦争勝利80年」発言の裏の意図

王毅外相が「抗日戦争勝利80年」に触れ、「歴史を直視することで未来を切り開くことができる」と発言したことは、中共が日本との外交場面でしばしば用いる戦術の一環である。このような歴史問題への言及は、中共が日本に対して道義的優位性を主張し、特定の問題について日本側の批判や反論を抑え込むために利用することが多い。

中共は歴史問題、とりわけ日中戦争や南京事件などを外交カードとして用い、日本に「過去の過ちを反省すべき」という圧力をかける傾向がある。これにより、日本側が現在の対立事項について強硬な姿勢を取ることを難しくする狙いがあると考えられる。

例えば、尖閣諸島問題や東シナ海での資源開発、さらには福島原発処理水放出問題など、日中間で意見が対立する課題において、中共は歴史問題を持ち出して日本側の発言力を弱めようとするケースが見られる。

今回の王毅外相の発言もその一例である可能性が高い。「抗日戦争勝利80年」という歴史的節目に言及しつつ、「歴史を直視する」という表現を用いることで、日本に対して過去の責任を再認識させようとする意図がうかがえる。このような発言は、中国側が現在の外交課題において有利な立場を築くために、日本側の道義的劣位を強調する手段として機能している。

ただし、日本政府はこうした中国側の戦術に対して慎重な対応を取る傾向がある。歴史問題への直接的な反論は避けつつ、現在進行中の具体的な課題について冷静に議論する姿勢を維持している。今回の日中韓外相会議でも、王毅外相の発言に対して岩屋外相が特段反論しなかった点は、日本側が歴史問題で不必要な対立を避ける一方で、実務的な協力関係構築に注力したい意図を示していると言える。

このように、王毅外相の発言は中国外交における典型的な戦術として理解できる一方で、日本側もその意図を認識しつつ慎重な対応を続けている状況だ。

しかし、このような状況が慢性的に継続すれば、まるで本当に日本が反省すべき歴史であるかのような既成事実化がなされる可能性がある。それは日本の国力の衰退に繋がるだろう。日本は、このような共産主義の本質的に悪辣な浸透工作の手口を見抜き、歴史専門家含め国を挙げての対策に期待するところだ。

大紀元日本の記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。