アメリカ連邦地裁は3月26日、トランプ政権が導入を進めていたトランスジェンダーの人々に対する米軍入隊の制限措置について、その実施を阻止する命令を解除してほしいとする政府側の要請を退けた。
アナ・レイエス連邦地裁判事は、3月18日に出した仮の差し止め命令を維持する判断を下し、政府の「取り消し」あるいは「控訴中の一時停止」の申し立ても否定した。これを受けて、政府は直ちに控訴している。
問題となっているのは、トランプ氏が1月27日に署名した大統領令「軍の優秀性と即応態勢の強化」である。この命令では、「虚偽の性自認を表明する者は軍の基準を満たさない」とし、「出生時の性別と異なる性自認は、名誉・誠実・規律を重んじる兵士の生活様式と相反する」と記している。
これに対し、レイエス判事は3月18日の判決で、「この方針は、トランスジェンダーの現役兵が持つ憲法上の権利を侵害する可能性が高く、深刻な不利益をもたらす恐れがある」として差し止めを命じていた。政府に控訴の準備期間を与えるため、命令の発効は3月21日まで猶予していた。
レイエス判事は79ページに及ぶ判決文の中で、「実に皮肉なことに、数千人のトランスジェンダー兵士が、他者の平等な権利を守るために命を懸けてきたにもかかわらず、その権利を今回の政策が否定しようとしている」と述べた。
3月21日の審理では、レイエス判事が国防総省に対し、当初3月26日としていた方針の実施を延期するよう要請した。政府は同日、「この方針はトランスジェンダーの人全体を排除するものではなく、『性別に強い違和感を持つ状態』という医療的条件に基づくものだ」として、差し止め命令の取り消しを申し立てた。
また政府は、仮に差し止めを維持する場合でも、その効力を控訴審の間は一時停止してほしいと求めた。さらに、3月21日に発表した新たな運用指針では、「『性別違和の症状を示す』とは、正式な診断に至るほどの症状を有する人に限られる」と説明した。
これに対してレイエス判事は、「新しい指針が出されたことは認識しているが、政府の根本的な主張自体は以前と変わっていない」と述べ、「前回の判断において、すでに控訴準備のための十分な期間を与えており、命令を解除する必要はない」とのべた。
さらに、政府の主張として「今回の国防総省の方針は、医療的条件に関連する軍の対応力、海外派遣の可能性、コスト面に焦点を当てている」と再確認しつつも、「性別違和を他の医療状態――たとえば双極性障害、摂食障害、自殺傾向など――と同列に扱うのは誤りだ」と述べた。
「性別違和は、他の医療状態とは異なる。なぜなら、性別違和を抱えるのはトランスジェンダーの人々に限られ、そしてトランスジェンダーでなければこの状態は経験しないからである」と判事は強調した。
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