ミャンマー地震の影響をうけてタイ・バンコクで建設中だった33階建てのビルが一瞬で完全に崩壊した事件で、崩壊現場では不適合な鋼材の使用を確認しており、その一部は、すでに操業停止命令が出ていた中資系の鋼鉄工場の製品と一致していたことがわかった。
施工担当の中国企業「中鉄十局」のバンコク事務所は地震の翌日に無人となり、連絡も取れなくなる(タイメディアが報道)など、中国企業による「証拠隠滅」や「責任逃れ」を非難する声が高まり、タイ国内では反中国資本感情が急速に高まっている。

手抜き工事の実態露呈
震源地から約1千キロも離れていたにもかかわらず倒壊したことや、それがバンコクで唯一崩壊したビルとなったことなどから、「手抜き工事が行われたのではないか」と各方面から指摘されている。
倒壊したビルは建設中(屋上部分はすでに完成)のタイ国家会計検査院の新庁舎だ。中国国有企業「中国鉄路工程総公司(CREC)」傘下の「中鉄十局」とタイの最大手総合建設会社ITDが共同で施工を担当しており、事故直後には、建設に関与していた中国人4人が現場から設計図や契約書など計32件の書類を持ち出そうとして逮捕され、「証拠隠滅」や「責任逃れ」を非難する声が高まっている。
さらに、施工担当の中国企業「中鉄十局」のバンコク事務所は、地震の翌日に無人となり、連絡も取れなくなる(タイメディアが報道)など、あまりに不誠実で無責任な中国企業の対応を問題視し、タイ国内では反中資感情が急速に高まっている。

タイ政府は今回の事件で徹底した調査をすすめている。
タイのエーカナット・プロムパン工業相は、3月30日にチームを率いて倒壊したビルのがれきの中から建材サンプルを採取し、現場で検査を行い、ビルには基準に満たない鋼材が使用されていた可能性があると指摘した。
同工業相はさらに「タイの工場で中国から来た旧式の鋼材生産設備を使って生産した結果、品質が基準に満たない鋼材が市場に出回っている」とし、中国製建材がタイに「災害的影響を及ぼしかねない」との見解を示した。

この事態を重く見たタイ政府は徹底調査の声明の後は、「中鉄十局」が関与するすべてのプロジェクトに対する全面的な調査を指示した。
今回の事件は、かつて中国が「一帯一路」構想の名のもとに世界中で低価格を武器に請け負ってきた工事の質に再び疑問を投げかけるものとなった。
タイだけでなく、今後中国企業と協力する各国にとっても、この倒壊事故は警鐘となるだろう。
(建設中のタイ国家審計署の新庁舎が倒壊する様子)
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