アメリカのスコット・ベッセント財務長官は、トランプ大統領がすべての輸入品に最低10%の関税を課すと発表したことを受け、各国に対して対抗措置を取らないよう警告した。
ベッセント氏は、3日夜に放送された米FOXニュースの番組で、「私から各国へのアドバイスは、今は報復しないことだ。落ち着いて様子を見てほしい。もし報復すれば、エスカレートする。報復しなければ、これが関税の『ピーク』だ」と語った。
3日朝、アメリカの主要株価指数が下落し、ダウ工業株30種平均は一時1500ドル安と急落した。
番組ホストのブレット・ベアー氏が、関税措置により401(k)やロスIRA(個人型退職口座)などの年金資産を不安視する人々へのメッセージを尋ねたのに対し、ベッセント氏は次のように答えた。
「我々が行っているのは、長期的な経済成長への土台を築くことだ。正直に言えば、我々は金融危機に向かう道を歩んでいた」
「私はかつて金融危機の歴史を教えていた。政府の過剰な支出は持続不可能だった」
さらにベッセント氏は、過去の株価急落の例を挙げながら、「すべてが崩壊する直前までは見かけ上は好調に見えるものだ」と指摘。今回の関税導入により、アメリカ経済は「市場の暴落という路線から外れ、健全な軌道に戻った」と主張した。
トランプ氏は3日に、新たな関税措置を発表。全輸入品に対する基本関税率10%は4月5日に発効し、特定国に対してはそれ以上の報復的な関税が4月9日から適用されるとした。自動車の輸入には、すでに25%の関税が同日深夜に発効している。
新たな措置では、中国からの輸入品に対して34%、ベトナムに46%、日本に24%、欧州に20%の関税が追加される。中国に対しては、既存の措置と合わせて総関税率が54%に達する見通しだ。
トランプ氏はこれらの関税について「公正性」の観点から正当化し、「長年にわたり米国製品に課されてきた関税や非関税障壁への対抗措置」だと説明。さらに「多くの場合、同盟国のほうが敵国よりもアメリカにとって不利な条件で取引している」と述べ、この日を「独立宣言の日」または「解放の日」と位置づけた。
欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、新たな関税について「世界経済にとって深刻な打撃」と強く批判し、「アメリカとの協議が不調に終われば、対抗措置を講じる用意がある」と表明した。
「不確実性が高まり、保護主義の連鎖が引き起こされる可能性がある。結果として、世界中で数百万人に悪影響が及ぶ」との声明を発表した。
また、中国共産党政府の当局者も、今回の関税に反対するとともに、アメリカに対して「報復措置を取る」と明言した。一方でトランプ氏は最近、中国および香港からの低価格小包を関税なしでアメリカに持ち込む抜け道を塞ぐ大統領令に署名。これにより、TemuやSHEINといった中国系オンライン小売業者が近年アメリカ市場に進出してきた状況に変化が生じる可能性がある。
さらに4日朝に出演したFOXニュースの番組で、ヴァンス副大統領は「一時的な痛みは避けられないかもしれない」としつつも、今回の関税措置によって「アメリカ国内の雇用を取り戻し、製造業を復活させることができる」と強調した。
トランプ氏は2024年の大統領選挙で、全輸入品に10~20%の最低関税を導入する方針を掲げており、中国製品については最大60%の関税を課すと公約していた。
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