4月7日、アメリカのトランプ大統領は、日本製鉄による米U.S.スチールの買収計画について、政府機関に再審査を指示した。これは、バイデン前大統領が今年1月、国家安全保障上の懸念を理由に、買収を阻止した判断を見直す動きとなった。
トランプ氏は、大統領覚書を通じて、対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、買収が米国の安全保障に与える影響を再評価し、45日以内に勧告を提出するよう命じた。
この再審査の指示を受け、日本製鉄は4月8日、「審査を改めて行うよう指示されたことに感謝する。既に計画している投資に着手できるよう、早期の審査完了を期待する」とコメントを発表した。
バイデン氏は当時、鉄鋼産業を「国家の戦略的基盤」と位置づけ、国内資本による所有が不可欠であると主張していた。一方、今回のトランプ氏の対応は、日本製鉄とU.S.スチールにとって、買収実現の新たな可能性を示すものとなった。
1月、バイデン政権の決定は、政治的な意図に基づいたもので、国家安全保障上の明確な根拠がないとして、両社は連邦裁判所に提訴していた。
トランプ氏はかつて、U.S.スチールの外国企業による買収には、慎重な立場を示していたが、日本からの投資自体には前向きな姿勢を見せた。今年2月には日本の首相と並んで、
「買収ではなく、大規模な投資を歓迎する」
と、語った。
U.S.スチールは4月7日、
「今回の判断は、バイデン政権の決定に対する当社の異議申し立てが正当であったことを示すものだ」
との声明を発表し、トランプ政権と協議を進めていく考えを示した。
2023年12月、日本製鉄は、U.S.スチールの買収を発表。世界的な事業拡大と米国内の製鉄設備の近代化を目的とし、約27億ドル(約4050億円)の投資を予定する。ペンシルベニア州やインディアナ州の製鉄所では設備更新などの計画も含まれていた。
今回の再審査では、国家安全保障や通商に関わる政府機関が関与し、企業側にも意見表明の機会が設けられ、審査は非公開で行われる見通しだ。
この買収計画をめぐっては、超党派の議員や労働組合から「外国資本による所有」への懸念が示されているが、一方、鉄鋼業が盛んな州の知事らは、雇用維持や地域経済への貢献を理由に買収を支持している。
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