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企業倒産1万件超え 中小企業中心に厳しさ増す 出版 洋菓子業界でも過去最多

2025/04/08
更新: 2025/04/08

帝国データバンクの報告書によると、2024年度の全国企業倒産件数は1万70件となり、前年度比13.4%増と3年連続で増加した。1万件を超えたのは2013年度以来11年ぶりであり、物価高や人手不足、価格転嫁の困難さなどが企業経営を直撃していることが明らかになった。

特に中小・零細企業の倒産が目立ち、負債額別では5千万円未満の倒産が6122件に上り、2000年度以降で最多となった。また、「個人+1千万円未満」の倒産は7153件に達し、倒産全体の71.0%を占めた。負債総額が100億円を超える大型の倒産は9件だった。

業種別ではサービス業が2638件、小売業が2109件、建設業が1932件。人手不足や物価上昇によるコスト増加が収益を圧迫する。

人手不足による倒産が深刻で、2024年度は350件の倒産が判明し、過去最多を更新した。2年連続で300件を超えたかたちとなった。業種別では建設業が111件で最も多く、運輸・通信業の49件と合わせて全体の約4割を占めている。企業規模では従業員10人未満の小規模企業が277件と約8割を占めた。

ゼロゼロ融資後の倒産は680件で、前年度の699件から2.7%減となり、初めて減少に転じた。ただし依然として高水準であり、不良債権とみなされる喪失総額は約1244億7400万円にのぼっている。

一方、物価高を要因とした倒産は925件と、前年度(837件)から10.5%増加し、初めて900件を超えて過去最多を更新した。建設業が254件で最も多く、製造業が180件、小売業が165件と続いた。

こうした背景には、企業がコスト増を価格に転嫁できない状況がある。帝国データバンクが前月に発表した「価格転嫁に関する実態調査」によると、全業種の平均価格転嫁率は40.6%で、1年前とほぼ同水準だった。また、「まったく価格転嫁できていない」と回答した企業も依然として1割を超えている。原材料費や人件費、物流費、エネルギー費の上昇が続く中、特に小規模企業では価格転嫁が難しく、経営を大きく圧迫している。

価格転嫁が進まない状況が今後も続けば、建設業、製造業、小売業を中心に倒産は高水準で推移する可能性がある。

こうした経営環境の悪化は出版・洋菓子業界にも広がっている。出版社の倒産は31件と前年度の1.8倍に増え、9年ぶりに30件を超えた。ペーパーレス化や少子化による需要減、製造コストの上昇が背景にある。2023年度は36.2%の出版社が赤字、業績悪化は6割に上った。

洋菓子店の倒産も51件と過去最多を記録。前年度比1.6倍に増加。麦粉や卵、砂糖、チョコレートなどの原材料の高騰に加え、価格転嫁の困難、大手チェーンやコンビニとの競争激化が拍車をかけている。

需要の減少とコスト上昇が重なり、両業界とも厳しい経営環境が続く見通しだ。

帝国データバンクは今後の倒産リスクを高める要因として、アメリカ経済の減速懸念、トランプ政権による25%の自動車関税、物価と賃金の好循環の不在、日銀の追加利上げに伴う借入金利の上昇、地銀再編に伴う融資先の選別などを挙げている。

これらのリスクが複雑に重なり合うことで、特に中小・零細企業の経営環境は引き続き厳しい状況が続くとみられる。2025年度は、政府による政策支援により事業再構築や企業の新陳代謝が進む可能性もあるが、企業倒産は緩やかな増加傾向が続くとの見通しが示されている。

 

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。