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相互関税第2波 日本24% 中国は累計104%

2025/04/09
更新: 2025/04/09

トランプ米大統領は4月9日、中国からのすべての輸入品に対し104%の関税を課す制裁措置を正式に発動した。中国以外の複数の国々にも、11%から最大50%に及ぶ報復関税が同時に実施された。ホワイトハウスは、現地時間9日午前0時1分に関税措置が発効したことを確認した。

制裁関税の経緯

今回の措置は、今年2月にフェンタニル関連で中国に10%の関税を課したことから始まり、その後20%に引き上げ、さらに4月2日の経済イベントで34%の報復関税を追加すると発表。最終的に104%に達した。

中国共産党(中共)側も報復措置を発表。関税の応酬によって米中間の年間約6千億ドル(約90兆円)に及ぶ貿易が影響を受ける見通しだ。

ホワイトハウスのレビット報道官は4月8日、記者団に対し「中国が報復に出たのは間違いだった。アメリカに攻撃すれば、トランプ大統領はそれ以上に強く応じる」と語った。

「中国が交渉に応じるなら、大統領は寛容な姿勢を示すが、最終的にはアメリカ国民の利益を最優先する」とも述べた。

ベッセント財務長官は中共の対応を「大きな誤算」と批判。「中国に対するアメリカの輸出は、中国からの輸入の5分の1にすぎない。関税戦でアメリカが失うものは少ない」と強調した。

加えて、トランプ大統領は関税発動の前に大統領令に署名し、6月1日から800ドル以下の中国からの小口輸入品にも90%の関税を課す方針を示した。

当初、5月2日から30%の関税を課す予定だったが、最終的に90%に引き上げた。これまで免税措置の恩恵を受けていた中国発の格安ECサイトSheinやTemuなどにとっては、大きな打撃となる。

他国への報復関税も発動 最大50%

対中関税と同時に、他国に対する報復関税も実施された。対象は先進国から新興市場まで広範に及び、為替操作や産業補助金などの非関税障壁を基準に、関税率が11〜50%に設定された。

4月2日の演説で、トランプ氏は「何十年にもわたり、我が国は近隣の国々だけでなく、友好国や敵対国からも略奪され、夢を壊されてきた」と述べた。

「外国の指導者たちは我々の雇用を奪い、不正な貿易で工場を荒らし、かつて美しかった『アメリカン・ドリーム』を引き裂いてきた」

米当局者らによると、4月9日の施行に先立ち、数十か国がアメリカに連絡を取り、貿易交渉に乗り出そうとしている。9日に開かれた上院財政委員会で、米通商代表部(USTR)のグリア代表は、「すでに50か国近くの代表が私に接触し、新たな通商政策について協議したいと申し入れている」と証言した。

ベッセント財務長官も、FOXビジネスネットワークの取材で「最大70か国が新たな通商協議を目指して接触してきている」と明らかにした。

国家経済会議(NEC)ディレクターのケビン・ハセット氏はインタビューで「交渉希望国の数が多く、対応が非常に煩雑になっている」と述べたうえで、ホワイトハウスはまず日本と韓国との交渉を優先させる方針だと語った。

「最終的に、関税を撤回するかどうかを決めるのは大統領自身だ」とハセット氏は強調した。

一方で、トランプ氏が本当に交渉に応じるのか不透明な部分も残る。ホワイトハウスのピーター・ナバロ貿易顧問は最近、「関税は交渉の道具ではない」と明言。CNBCの番組で、「たとえばベトナムが『アメリカ製品への関税をゼロにする』と申し出ても、我々が問題にしているのは非関税障壁なのだから、それだけでは不十分だ」と語った。

トランプ氏は、ベトナム共産党のトー・ラム書記長がアメリカ製品への関税ゼロを提案してきたことを、自身のトゥルース・ソーシャルで認めている。

そのうえで、「関税を課しつつ、同時に交渉を進めることも可能だ」との考えを示しており、4月8日にはイスラエルのネタニヤフ首相との記者会見で

「我々と協定交渉に臨む国は数多くある。公正な協定になるだろう。だが場合によっては、相当な関税を払うことにもなるだろう」と語った。

市場は関税の影響に警戒感

報復関税発動を控えた市場では、先行き不安が広がった。主要株価指数の先物は1%超下落し、債券市場では10年物アメリカ債利回りが4.3%台へと上昇。ここ数日の急落からやや反発したかたちとなった。

一方、原油価格は引き続き下落傾向を示し、ニューヨーク・マーカンタイル取引所では4%近く下落して1バレル=58ドルを割り込んだ。

ブルーチップ・デイリートレンドリポートのチーフ・テクニカルストラテジスト、ラリー・テンタレリ氏は、「現在の関税主導の市場環境には、明確なモニタリング体制がないため、株式は高いボラティリティ(変動性)を保ったままだ」と指摘。
「非常に流動的なニュースサイクルの中で、関税をめぐる状況はいつでも変化し得る」との見方を示した。

インフレと成長鈍化の同時進行、投資家の懸念拡大

投資家の間では、物価上昇と経済成長の減速が同時に進む「スタグフレーション」への懸念が高まりつつある。関税が話題の中心になる一方で、投資家は今週発表される経済指標にも注目している。

3月の消費者物価指数(CPI)は4月10日に発表予定で、クリーブランド連邦準備銀行の「インフレ予測モデル」によれば、前年同月比で2.6%と、前回の2.8%からやや減速する見通し。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは3.1%から3.0%に低下すると予測されている。

また、生産者物価指数(PPI)は4月11日に公表予定で、前月比0.2%の上昇が予想されており、コアPPIは0.3%の上昇と見込まれている。

米連邦準備制度理事会(FRB)は4月9日に、先月の連邦公開市場委員会議事要旨を公表予定。この中では、関税が物価安定と最大雇用というFRBの二重の使命にどのような影響を与えるかについて、懸念が記されるとみられる。

FRBのパウエル議長は4月4日の講演で、「関税が一時的なインフレ上昇を引き起こす可能性は高いが、影響が長期化するリスクもある」と警戒感を示している。

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。