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「中国とは組まない」豪首相が明言 トランプ関税への対応めぐり

2025/04/10
更新: 2025/04/10

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は9日、中国の肖千(シャオ・チエン)駐豪大使が呼びかけた「トランプ米大統領による関税措置に対抗するための共闘」提案を明確に拒否した。5月3日の連邦総選挙を前にケアンズで選挙活動中だった同氏は、オーストラリアは独自の立場から国際交渉に臨むと強調した。

「オーストラリアは自国の立場を自ら発信する。自由で公正な貿易は良いものであり、それが我々の基本的な考え方だ」と記者団に語った。

一方、野党・自由党のピーター・ダットン党首も同日、メルボルンでの遊説中にこの件について問われ、「中国との貿易関係は相互の利益にとって重要だ。国内の工場を成長させ、世界への輸出拡大を目指すべきだ」と述べた。

ダットン氏はまた、「前政権では11つの自由貿易協定(FTA)を締結した。現政権は何件結んだか。1件だ。我々の産業をもっと成長させる必要がある」と述べ、現政権の通商政策を批判した。

肖大使はこれに先立ち、オーストラリア政府に対し「開かれた協力的な通商関係の維持」を呼びかけるとともに、アメリカによる関税引き上げに対応するため、「オーストラリアや他国と手を携える用意がある」と語っていた。

しかし、リチャード・マールズ副首相はこの提案を明確に否定。Sky Newsのインタビューで、「中国と足並みをそろえるつもりはない。オーストラリアはあくまで自国の国益に基づいて行動する」と述べたうえで、「世界で起きているいかなる対立においても、中国と手を取り合うようなことはしない」と語った。

また、「注力しているのは通商相手国の多角化である」と述べ、外交方針としては過去3年間における中国との関係安定が重要であったとしながらも、「それは中国と共通の立場を取ったり、手を取り合ったりすることを意味するものではない。我々はそのようなことはしない」と改めて強調した。

トランプ関税の再強化と豪州の立場

トランプ氏は4月9日、中国共産党政権がアメリカ製品に対し84%の報復関税を課したことへの対抗措置として、中国製品への関税を125%に引き上げると発表。あわせて、他の国々に対する相互関税措置を90日間停止すると明らかにした。

トランプ氏は、自身が立ち上げたトゥルース・ソーシャルに「中国が世界市場に対して敬意を欠いているため、直ちに125%の関税を課す」と投稿した。

「アメリカや他国を搾取する時代は、もはや持続不可能で容認されない」と述べた。

この変更により、中国を除く多くの国々の対米輸出に対する関税率は10%となり、従来より有利だったオーストラリアの条件(10%)は、他国と同水準に引き下げられたことになる。

これを受けてアルバニージー首相は、「最も望ましい取引はゼロ関税だ。あらゆる場でその実現に向けて働きかけていく」と表明した。

さらに、「こうした日々の政策変更は、国際交渉において戦略的かつ冷静に、明確な立場で臨む重要性を示している」と述べ、オーストラリア政府としての一貫した姿勢を示した。

トランプ政権が発表した相互関税の90日間停止措置を受け、オーストラリアの株式市場と為替市場は4月10日に反発。主要株価指数であるS&P/ASX 200は4.7%の上昇を記録し、豪ドルも1豪ドル=61.83米セントまで回復した。前日には一時60セントを割り込んでいた。

オーストラリア在住の記者。以前はMotley Fool Australia、Daily Mail Australia、Fairfax Regional Mediaの記者を務めていました。