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南ア 米国との関係修復へ特使を任命 大使追放で外交関係が悪化

2025/04/15
更新: 2025/04/15

南アフリカ政府は4月14日、アメリカとの関係を立て直すため、特使を任命したと発表した。先月、駐米南アフリカ大使が米政府から追放されたことを受けた措置で、両国関係はここ数か月で急速に悪化している。

任命されたのは、元財務副大臣であり通信大手MTNの会長を務めるムチェビシ・ジョナス氏。今後もMTN会長職は継続しつつ、特使としてアメリカ側と協議を重ねる見通しだ。

南ア大統領府によると、ジョナス氏は同国の外交・貿易・二国間関係の優先課題を推進し、米政府関係者や企業リーダーとの連携を深める役割を担うという。外交官としての正式な「大使」ではないが、ラマポーザ大統領と南アフリカ政府の公式代表としてアメリカと協議を行う。

ジョナス氏は声明で、状況は非常に複雑で簡単には解決できないが、「両国の共通の利益を見出し、長年の関係を回復させたい」と述べ、南アフリカ国民に対し「粘り強く交渉を見守ってほしい」と呼びかけた。南アフリカ政府は現時点で、新たな駐米大使をまだ任命していない。

両国関係が悪化した背景には、トランプ米大統領による南ア政府への批判がある。トランプ氏は、与党アフリカ民族会議(ANC)政権が国内の白人少数派を差別していると非難し、南アの外交姿勢が反米的だと指摘。今年2月には対南ア支援の打ち切りを命じる大統領令にも署名した。

さらに4月には、自身のSNSトゥルース・ソーシャルで、「白人農家から土地を奪い、家族も殺している」などと投稿し、南アの土地収用法を強く批判した。投稿には、野党・経済的自由の闘士(EFF)のジュリアス・マレマ氏が「農民を殺せ」と繰り返す過去の演説映像も含まれていた。

南アでは、公共の利益を理由に補償なしで土地を収用できる法律が成立しているが、現時点で実際に土地が没収された例は確認されていない。政府は、白人農家を標的とした土地収用や暴力の事実はないと主張し、こうした批判は誤情報に基づくものだとしている。

また、南アが国際司法裁判所でイスラエルのガザ地区で「ジェノサイド(大量虐殺)」を行なっていると提訴したことも、米政府との緊張を高める要因となった。アメリカ側は、南アがハマスやイラン政府に近い外交姿勢を取っているとして懸念を示している。

南アフリカのエブラヒム・ラスール前駐米大使は、シンクタンク主催のオンライン会議で、「トランプ氏は現職者、つまり権力を握る者たちへの攻撃を仕掛けている」とし、「アメリカを再び偉大にする」運動を「白人至上主義に突き動かされた本能から生まれたものだ」と評した発言が問題視され、米政府から「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外追放された。