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マスク氏「レアアースはどこにでもある」 中国の輸出停止は意味ないか 

2025/04/16
更新: 2025/04/16

中国共産党政権は、トランプ政権による関税引き上げに対抗する措置の一環として、4月4日から7種の主要なレアアース(希土類)素材および磁石の輸出を停止した。この動きに対し、テスラCEOで世界一の富豪であるイーロン・マスク氏は4月15日、Xで「レアアースの輸出停止は実際には意味がない」と指摘し、冷静な見解を示した。

マスク氏は投稿で、レアアースについて「人々は『レア(希少)』という名前に惑わされがちだが、実際にはそれほど希少なものではなく、どこにでも存在する鉱物だ」と述べた。

問題の本質は入手ではない。マスク氏は、「本当に重要なのは、レアアースを精製・製錬する能力、そしてそれらを使って電動モーター用の磁石を製造する技術力だ」と強調。

中共の強みは、これらの鉱物を精錬・製造するための大規模な重工業インフラにある。それが西側諸国のサプライチェーン上の最大の弱点になっていると指摘した。

ロイターも分析記事の中で、中共がレアアースの輸出を制限することで、資源の支配権を「武器化」していると指摘した。

レアアースは、ジェットエンジン、レーザー、コンデンサーなどに広く使われている。コンデンサーはAIサーバーやスマホのチップに欠かせない部品だ。また、レアアース磁石は自動車、ドローン、ロボット、ミサイルなどの製造にも使用されている。現在、中国は世界のレアアース精錬で主導的地位にあり、磁石の生産量は世界の約90%を占めるとされている。

こうした動きを受けて、トランプ政権は新たな対応策を進めている。英フィナンシャル・タイムズは4月12日、関係者の話として、トランプ政権が太平洋の海底にある金属資源を戦略備蓄として大量に確保する方針であると報じた。これらの金属は既存の連邦戦略備蓄に追加され、中国のバッテリー鉱物やレアアース供給支配に対抗する目的があるという。

このほかにも、深海採掘の許可申請手続きの迅速化や、「多金属ノジュール」と呼ばれる海底鉱物の地上での加工能力の整備・強化といった施策も含まれている。

多金属ノジュールは、海底に分布するジャガイモほどのサイズの鉱物だ。コバルト、ニッケル、銅、マンガンなどを豊富に含む金属資源として注目されている。広範囲に分布し、埋蔵量が多いことから、将来的に最も有望な海底資源の一つとされている。

実際に、中共が鉱物資源を外交的報復手段として利用するのは今回が初めてではない。

2023年7月:ガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)、およびそれらの化合物に対する輸出制限を発表

2023年10月:黒鉛(グラファイト)への輸出制限を実施

2024年8月:金属アンチモン(Sb)などに対する輸出制限を追加

2024年12月初旬:ガリウム、ゲルマニウム、アンチモンの対米輸出を全面禁止

こうした動きは、米中間の半導体競争が激化する中で行われており、資源を外交・経済戦略の手段として活用する「資源兵器化」の一環とみなされている。