未来に絶望し、過酷な労働環境や社会的競争から逃げて、無気力な生活を送る中国の若者たち。
彼らの無気力な生活スタイルを表す新たな言葉「ネズミ人(中国語:老鼠人、英訳:rat people)」が、最近、中国のSNS上で爆発的な人気を集めた。
「ネズミ人」は、消費や結婚に無関心になっている逃避型ライフスタイル「躺平(タンピン)族」(寝そべり族)の進化系とみなされ、「ネズミ人」には通常、3つの主な特徴があるといわれる。
第1は「夜に活動的になるが、昼間はボケーとしている」
第2は、生活範囲が部屋の一角に限られていること。
第3は、社交的に「省エネ」モードであり、ネット上での交流はするが、対面での交流を恐れること。
平たく言えば、働かず、ほとんど外出もせず、ベッドの上で一日を過ごす「昼夜逆転の省エネモード」のことだ。
たとえば、ある若い女子の「ネズミ人日常」とは、朝11時過ぎに起床し、13時過ぎに携帯から注文した宅配食を食べ、それからもう一度寝る。夕方にはタピオカミルクティーを注文して届いたらそれを飲み、猫に餌をやってまたベッドにもぐりこむ。それから夕食を食べ、ドラマを見て過ごし、明け方2時頃に寝る。同「ネズミ人女子」の動画は、「人間って、こんなに幸せでいいの?」で締めくくられていた。
かつての「精力的に暮らす」系のライフスタイル動画にとってかわって、今では、こうした「低エネルギーでだらしないネズミ人のリアルな日常」が、中国の動画プラットフォームで新たな流行となった。
関連するタグやトピックスには、多くのアクセスが集まり、「ネズミ人」関連のグッズも、品切れ続出となるほど爆発的に売れている。
しかし、このブームの根底にあるのは、「変わりたいが動けない」といった現代中国の若者が抱える深刻な心理的疲労と社会への失望であった。
「若者が希望を見いだせない国家は、やがて崩れる」とかねてから多くの専門家が警告してきたが、「ネズミ人」はまさにその警告が現実味を帯びた現れだ。

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