中国国内では近年、反体制派の声が以前にも増して高まってきた。自由を求める若者、異議を唱える学者、宗教弾圧に抗議する市民、そして命を懸けて弱者を守る弁護士たちの姿が、世界の注目を集めた。
しかし、こうした声は中国当局にとって最も警戒すべき「異音」であり、弾圧の対象とされてきた。それでも、良心の声は消されるどころか、世界中に拡散した。
「中国の良心」
中国で最も尊敬されている人権派弁護士の1人であり、「中国の良心」と呼ばれる高智晟(こうちせい)氏。
利益を前に、彼は正義と良知を選んだため、中国当局から拉致、投獄され、電気ショックや殴打などの残酷な拷問を受けた。彼の物語は数え切れないほどの人々に感動を与え、その名は今や「正義の代名詞」になった。
彼が最後に消息を絶ったのは、2017年8月13日で、それ以来、家族のもとに彼の安否に関する情報は一切届いていない。
中国の元弁護士で人権活動家の賴建平氏や呉紹平氏は、「たとえ彼が生きていたとしても、現在も非人道的な拷問を受けている可能性が高い」と懸念を示した。

■ 「もう高望みはしません。ただ知りたい」「夫は今も生きているのですか?」
高氏の妻の耿和(こう・わ)さんは年々、来る日も来る日も、米国の中国総領事館前で「夫の情報」を求めて抗議してきた。
7年に及ぶ沈黙の中で、問いかけることすら許されぬ現実に直面する高氏の家族。その姿は、名もなき数多の中国人権活動家たちの苦悩と希望を象徴していた。

4月20日は、高智晟氏の61歳の誕生日だ。この日、米国、アイスランド、フランス、グアムなど世界各地で「高智晟を探せ(尋找高智晟)」の抗議イベントが開かれた。
アイスランドの中国大使館前で、抗議活動を行った中国民主党連合総部アイスランド支部の周鋒氏は取材に対し、「今日、本来であれば家族と祝うべき誕生日を、高智晟氏は暗闇の中で迎えた。私たちは、この理不尽を許すことができない」と訴え、国際社会に向けて中共への圧力を呼びかけた。



「世界でもっとも勇敢な弁護士の一人」
陝西省出身のキリスト教徒である高智晟氏は、貧しい環境の中で育ち、中国軍での軍役を経たあと、独学で法律を学び弁護士資格を得た。
かつて中国司法部(省)や官製メディアから「全国十大優秀弁護士」に選ばれたこともある高氏は、長年にわたり弱者の権利擁護に尽力してきた。庶民による地方政府に対する権利擁護訴訟を多く取り扱ってきた。
当局の弾圧を恐れ、法輪功学習者や中国家庭教会に対する人権侵害など、多くの弁護士が尻込みする案件の弁護を、高氏は請け負ったきた。(その後、高氏の弁護士資格は剥奪されている)
過去3度にわたり、中国の指導者に「法輪功への弾圧をやめるよう求める公開書簡」を送付したため、2006年「国家政権転覆扇動罪」で懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受けた。刑務所での懲役のほかに、生命の危険にも及ぶ迫害を、高智晟氏は何度も受けている。
「中国の良心」と称されてきたが、それゆえに当局から最も厳しい迫害を受けて来た。
カナダ前アジア大平洋担当大臣デービッド・キルガー氏は、「高智晟氏は、世界でもっとも勇敢な弁護士である」と賞賛していた。高氏は、ノーベル平和賞に三度ノミネートされている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。