米中間の関税戦争が激化する中、当初中国の航空会社向けに製造されたボーイング機が4月19日、アメリカの製造拠点へと戻された。
この機体は中国・厦門航空向けのボーイング737 MAXで、同日午後6時過ぎ、ワシントン州シアトルにあるボーイング・フィールドに着陸した。機体には厦門航空の塗装が施されている。
この機体は、中国・舟山にあるボーイングの最終仕上げセンターで、納入直前の作業を待っていた多数の737 MAXのうちの1機だ。アメリカまでの約8千キロの帰路では、グアムとハワイで給油を行いながら飛行している。
トランプ大統領は、中国からの輸入品に対する基本関税率を145%に引き上げ、中国共産党政権もこれに対抗してアメリカ製品に125%の報復関税を課した。航空コンサルティング会社IBAによれば、約5500万ドルとされるこの機体の輸入に対し、中国の航空会社には多額の関税負担が発生する可能性がある。
この737 MAXの帰還については、ボーイング側も厦門航空側も、誰が最終的に決定したのかを明らかにしていない。
737 MAXはボーイングの主力機種だが、2018年と2019年に発生した2件の墜落事故で乗員・乗客全員が死亡するなど、複数の安全上の問題が指摘されてきた。2024年には、アラスカ航空の737 MAXのドアパネルが離陸直後に脱落する事故が発生し、米連邦航空局(FAA)はボーイングに対する監視体制を強化している。
今回の厦門航空向け737MAX機のアメリカ帰還は、航空業界が長年享受してきた関税免除の時代が終わりつつあることを示すもので、新造機の納入体制にも混乱が生じている。
さらに、ボーイングは過去5年近くにわたり、中国向け737 MAXの輸出を停止しており、状況の悪化に拍車をかけている。業界アナリストによると、関税制度の急激な変化により、一部の航空会社は納入を延期して関税回避を図ろうとする動きを見せているという。
また、中共政府が国内の航空会社に対し、ボーイング機の新規受領を停止するよう指示しているとの報道もあり、4月15日にはボーイングの株価が2.5%下落。今年に入ってからの累計下落率は10%に達している。
トランプ氏は4月18日、中共の高官から取引に向けた接触があったと明かし、「これ以上中国に関税を上げさせたくない。一定の水準を超えると、アメリカ製品が買われなくなってしまう」と述べた。さらに今後、「3〜4週間のうちに関税戦争を終結させる合意が成立する可能性がある」との見通しを示している。
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