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社会問題 ——人口危機の本質は「希望の欠如」か

「結婚も出産も拒否」 圧力には皮肉で応戦する中国の若者

2025/04/22
更新: 2025/04/22

産めと言われても、育てられない。
残せと言われても、何もない。
財産も未来もない、あえて「軟肋(子供をさす)」も作らない。

自分には何もないからなにも怖くない──中国若者の叫び

中国政府が直面する人口減少と高齢化の危機に対し、若者たちは、結婚や出産を拒否することで、静かな抵抗を示した。​

最近、「上海で孤独死した老人の遺産が、国に没収された」という報道をきっかけに一部中国の弁護士は「結婚・出産しなければ遺産は国家のものになるぞ」と若者たちに警告した。

そんな現実味を帯びる「脅し」に対し、若者たちの反応は如何に?

「私の唯一の遺産はこの遺体。持っていってくれ、ちょうど埋める場所に困っていた」といった皮肉たっぷりのコメントがSNSで拡散され、政府の施策に対する無関心と反発の姿勢が浮き彫りになった。​

かの※「我々は最後の世代だ」という有名な言葉は、ここでも多く引用されていた。

※「我々は最後の世代だ」の言葉は、2022年の上海における都市封鎖時に、「集中隔離施設へ行かない事で処罰され、その影響は、お前たちの子供や孫の世代にまで及ぶぞ」という当局者の脅しに対する、ある若者が残した、諦めと反抗が混じり合った叫びだ。

経済的安定も社会保障もなく、あるのは莫大なプレッシャーと終わりなき自己責任論。
そんな中で、中国政府は、若者に「もっと産め、もっと貢献しろ」と命じるが、その声に返ってくるのはただ一つ、言葉のない冷笑だ。

彼らは声を上げない。戦いもしない。ただ、そっと背を向ける。その沈黙こそが、最大の拒絶であることを、国家は理解しているのだろうか?

中国民政省が今年2月に発表した統計によると、2024年の婚姻数は610万組と過去45年間で最低を記録した。

2015年まで実施された「一人っ子政策」や急速な都市化の影響で、中国では数十年にわたり出生率が低下を続けた。

近年、中国共産党(中共)当局は、人口減少に歯止めをかけるため、あの手この手を使って結婚・出生率を上げようとありったけの知恵を絞って対策を練ったが、改善の兆しは全くなかった。

一部の村では、「恋人を連れて帰らないと村に入ることを許さない」と書かれた目を疑うような垂れ幕までも掲げられ、なかには、「国家の呼びかけに応じるため」という大義名分から、「独身の従業員(28~58歳、離婚も含む)は、数か月以内に結婚しないとクビ」と脅しの通達を出す企業まで現れた。

 

「彼女連れて帰らないと村に入るな」と書かれた垂れ幕、中国湖南省懐化市通道県蒋家堡村(動画よりスクリーンショット)

 

軟肋(ルヮンレイ)

「なぜ結婚しないのか? なぜ子を産まないのか?」と街角で出会った若者たちを捕まえては、その本音を聞く動画が多くSNSに流れているが、もっとも印象的な回答はこれだ。

「結婚するお金はないし、なぜあえて軟肋なんかを作る必要がある?」

こんなことを言われると、質問者は返す言葉もない。

軟肋(ルヮンレイ)とは本来、肋骨(あばら骨)のことだが、骨折しやすい部位であることから「弱み」の意味でも使われ、昨今の中国では、この「軟肋」が悪辣な場面で使われる。

例えば、中共当局者が、正当な権利を主張する市民を威圧する時に、これを言うのである、「余計な波風を立てるな。おまえは自分の軟肋を考えろ」と。

また実際に起きたことだが、ある学校の役人が、地方政府の命を受けて、生徒の保護者に対し「中国選挙民意識」という名のSNSチャットグループからの退出を求めた際に使った脅しが、「子供の入党と前途を考えろ」だった。

背景を知らない日本人には、不可解な会話にしか見えない。それもそのはずで、中共統治下の中国では、日本では想像もつかないほどの個人情報を当局が握っており、それを、あからさまに脅迫として使うからだ。

海外に出て、中国の民主や人権を主張する中国人にとっては、国内に残留する親族が「軟肋」、つまり「人質」となっていて、「我々は最後の世代だ」の流行語も、「自分にはあんたらが脅し使える軟肋(弱み)はないぞ」という決意の表明であった。

つまり、現代中国において、「軟肋がない」ことは、ある意味「勝ち組」なのだ。

 

イメージ画像。湖北省武漢市の小学校で、一緒に昼食を食べる子供たち (STR/AFP via Getty Images)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!