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中谷防衛相 日米の関税交渉と安全保障の分離を強調 深まる溝に打開策は?

2025/04/22
更新: 2025/04/22

日米関税交渉と安全保障問題をめぐり、日本政府は両者を切り離して議論する方針を明確にした。一方、米国は関税交渉の場で安全保障を交渉材料とする姿勢を見せており、両国間の溝は依然として深い。今後も粘り強い協議が続く見通しだ。

4月22日に行われた防衛相会見では、日米間の関税交渉と安全保障問題の関係について、総理大臣および防衛大臣が明確に「リンクさせて考えるべきではない」との立場を示した。総理は前日の参議院予算委員会でも「関税の交渉と安全保障の問題をリンクさせて考えるべきではなく、分けて議論していかないとおかしくなる」と明言しており、防衛大臣もこれを支持する姿勢を示した。

日本政府は「関税と安全保障は別問題」との認識を繰り返し表明しているが、米国側の姿勢はこれと対照的である。米国は関税交渉の場で安全保障上の要素を交渉材料とする姿勢を見せており、特に自動車分野などの包括的な関税見直しを求める日本に対し、安全保障を含む「ディール(取引)」を迫る構図が浮き彫りとなっている。また、米国大統領は日本に対し、米軍駐留経費の負担増を求める発言を繰り返しており、これが関税交渉の文脈で持ち出される場面もある。

米国は近年、対中経済政策の一環として「デカップリング(経済的分断)」を強く推進している。過去の政権以降、対中追加関税やハイテク分野での規制強化などを通じて、米中間の経済的な切り離しを進めてきた。

さらに、米国は関税交渉の過程で、貿易相手国に対して中国との取引制限を求める圧力をかけていると先週米紙ウォールストリート・ジャーナルに報道されている。例えば、米国は関税障壁の軽減と引き換えに、中国経済を孤立させるための措置として、自国を経由した中国製品の輸送禁止や、中国企業の進出阻止、中国製の安価な工業製品の排除などを他国に求めているとされる。

防衛相は、関税交渉とは切り離して、日米同盟の抑止力・対処力の強化に引き続き取り組む方針を強調した。3月30日に行われた日米防衛相会談では、両国の防衛力強化と同盟の抑止力向上について「切迫感をもって進めていく決意」を再確認しており、今後も米国防長官や新たに着任したグラス駐日米国大使と緊密な意見交換を行う意向を示している。

日本政府は関税交渉と安全保障を切り離す方針を堅持しているが、米国は両者を交渉材料としてリンクさせる姿勢を見せている。また、米国は関税交渉を通じて各国に中国とのデカップリングを実質的に迫っている事実が複数の報道で確認されている。

打開策はあるのか?

日米間の関税交渉と安全保障を巡る溝は依然として深いが、打開策を見出す余地はあるのだろうか?

まず、日米両政府は関税問題について早期合意を目指すことで一致しており、今後も閣僚級や事務レベルでの協議を継続する方針である。双方が譲れない国益を抱えつつも、共通の合意点を見出すための粘り強い交渉が進められている。また、日本政府は米国の要求を詳細に検討し、歩み寄りが可能な分野を模索する姿勢を示している。

さらに、交渉の中では自動車や農産品の市場アクセス、為替政策、投資拡大など、複数の論点ごとに調整の余地が存在する。日本側は譲歩を最小限に抑えつつ、同盟関係の維持・強化を図る戦略をとっており、米国側も国内経済や外交上のメリットを考慮して柔軟な対応を取る可能性がある。

次の日米関税協議は、4月中に閣僚級で実施する方向で日程調整中である。現時点で具体的な開催日は公表されていない。

大紀元エポックタイムズジャパン記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。