中国経済の減速と失業率の上昇が続く中、江蘇省南京市で、「ある失業者による異常な求職行動」が中国SNS・ウェイボー(微博)のトレンド入りした。
中国メディアによると、男は町の自動車販売店を訪れて試乗し、他の展示車に次々とぶつけた。翌日も別の自動車販売店の車に試乗し、路肩に駐車中の別の車に激突し、「交通事故」まで起こしたという。
男の試乗に同乗していた販売店スタッフはけがを負い、男は計5台の車(いずれも高級車)を破壊し、被害総額は約80万元(約1500万円)に達した。
最初は「操作ミス」による事故と思われていたこの「事件」。2つの案件を取り扱った警察官が同一人物であったこともあり、不審に思って捜査した結果、男は故意に店に損害を与えようとしていたことが判明した。
後日、男は、「自分は借金に追われ、働き口も見つからず、せめて損害を出せば店側が雇ってくれると思った」と供述し、故意の犯行を認めた。
衝突事故(事件?)は男による常軌を逸した「求職計画」のシナリオだったというわけだが、事は男の計画通りには運ばなかった。男は「騒乱挑発罪(尋釁滋事罪)」の容疑で、懲役4年8か月の実刑判決を言い渡された。
(「事故」の様子)
働きたくても働けない国 そして暴走する求職者たち
中国では貸し倒れを防ぐために、銀行が債務者に職を斡旋する例はよく聞く話だ。中国のネット上には「雇ってほしくて、わざと飲食店で無銭飲食する」といった内容のショートムービーが多く出回っている。
「今回の事件も、こうした動画からヒントを得たのではないか」と指摘する声も上がったが、いずれにしても今回の事件は、経済低迷の中で職を得られず苦悩する一人の男の暴挙だ。
「車を壊せば雇ってもらえる」「無銭飲食すれば働かせてくれる」
──経済崩壊が生んだこうした異常な就職活動はまさしく社会の闇だ。
現に、河南省で若者が「刑務所に入れば三食と寝床が保証される」と自ら派出所で暴れ逮捕される事件が起きており、「働けない」現実が、人を極限にまで追い詰め、犯罪や自暴自棄を招く。
ただでさえ、経済成長という幻想が崩れ去った後の中国、これにさらに追い打ちをかけているのが、米中関税戦争の再燃だ。輸出依存していた中国の産業は、バタバタ倒れ、失業の波は都市から地方まで広がっている。
「失業問題」をどうにかしなければ、次に車を壊すのは誰か、誰にも予想できないのだ。

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