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中共による台湾封鎖の現実と国際的リスク

2025/04/24
更新: 2025/04/24

中国共産党による台湾封鎖の可能性が高まりつつある情勢において、軍事・経済・外交の各側面からその現実性とリスクを徹底的に分析し、国際社会の反応、経済制裁、封鎖継続の困難さなど、多角的に「台湾封鎖」の代償を論じる。

近年、台湾周辺での軍事演習や威嚇行動を常態化させ、中国共産党(中共)による台湾封鎖の現実性が国際社会の注目を集め、封鎖能力の誇示を進めているが、全面的な封鎖の実行には多くの困難が伴い、その代償は極めて大きいと言える。本稿では、中共が台湾封鎖を実行した場合に発生する軍事的・国際的・経済的コストについて、多面的に検討しよう。

海空全面封鎖の難しさ

中共は、これまで台湾周辺で大規模な軍事演習を繰り返しており、2024年には陸・海・空軍およびロケット軍(ミサイル部隊)を動員し、台湾本島北部および南部の主要港を対象とした封鎖訓練を実施した。実際の封鎖作戦においては、主力となるのは海軍であり、空軍の役割は、限定的な局地支援にとどまり、他の軍種は、戦術的・戦略的な制約から積極的な関与が難しいと言う。

空域の封鎖については実効性に限界があり、中共軍機は台湾海峡や南西部、北部に対して頻繁な接近を行っているが、東北部においては日台の防空網が重なり、進出には極めて高いリスクが伴うと言う。24時間体制での空域封鎖を実現するには、戦闘機や早期警戒機の常時運用が不可欠であり、パイロットや機体への負担が増大することで、事故発生や稼働率の低下を招く恐れがあった。

海上封鎖についても、台湾周辺に長期間にわたり多数の軍艦を展開し続けることは、中共海軍にとって大きな負担となり、たとえば、中共の東部戦区の主力駆逐艦や護衛艦を半数交代制で展開しても、南部・東部・北部の各海域に配置可能な艦艇数は、各方面6隻前後にとどまり、300キロ以上の封鎖ラインを維持するのは現実的ではない。この状況では、船舶の完全な遮断は事実上不可能である。

さらに、小型の056A護衛艦は貨物船との接触リスクが高く、補給艦の支援能力にも限界が存在するため、長期的な封鎖作戦においては艦艇の稼働率や補給体制の脆弱性が露呈することになると言われている。

中共海軍の主要基地の分布と、台湾に対する海上封鎖の可能な展開ルート。(アメリカの2024年中共軍力報告/大紀元による図)

他戦区からの支援とその制約

北部戦区および南部戦区から追加の艦艇を動員する選択肢も存在するが、それぞれ黄海・東シナ海および南シナ海の防衛任務を担っており、全力投入は現実的ではないとされ、特に空母を含む艦隊の運用には、補給艦の不足が深刻な課題となり、他地域の防衛体制を脆弱化させる懸念も生じるという。

また、台湾周辺の海域は季節および気象の影響を強く受けるため、台風や荒天によって小型艦艇は退避を強いられる場合もある。こうした自然条件は、作戦の中断を引き起こす現実的な要因だ。

国際的な対立と衝突の危険性

中共海軍が台湾周辺で長期間にわたり展開すれば、台湾海軍との監視・対峙が常態化し、偶発的な衝突の危険性が急速に高まる。また、台湾周辺の海域には、日本やアメリカの商船および軍艦が頻繁に航行しており、米軍第七艦隊や日本の海上自衛隊が即応して警戒・監視にあたることは確実である。

仮にアメリカや同盟国の商船に対して、中共軍艦が拿捕または臨検を試みる場合、アメリカ軍および同盟国の艦隊が直ちに護衛に出動するため、国際的な軍事的緊張は急速に高まる。

さらに、イギリス、フランス、ドイツなど欧州各国の艦隊が、インド太平洋地域に派遣される可能性も高く、結果として多国籍艦隊と中共海軍が、直接対峙する構図が形成されてしまう。

このような緊迫した状況下では、偶発的な衝突が全面的な武力衝突へと拡大するリスクが増大し、中共海軍が多国籍連合軍によって包囲される可能性も現実味を帯びてきた。

経済的・外交的コスト

中共による台湾封鎖は、世界経済および貿易に甚大な影響をもたらす。台湾はエネルギーの96%を輸入に依存しており、封鎖が長期化すれば、台湾経済は深刻な打撃をこうむる。一方で、世界のサプライチェーンやエネルギー輸送も深い混乱に陥る可能性が高い。

これに対し、アメリカおよびヨーロッパ諸国は、中国に対して厳しい経済制裁や関税引き上げといった報復措置を講じる公算が大きい。実際、アメリカ議会は「台湾紛争抑止法案」を可決し、中共高官の資産公開および制裁準備を進め、トランプ大統領もまた、中共が台湾を封鎖する場合、中国製品に対し150〜200%の関税を課す意向を明言した。

さらに、アメリカ軍および同盟国は、マラッカ海峡などの要所において中国商船への封鎖・臨検を実施する「逆封鎖」の可能性を視野に入れており、中国は自国のエネルギーや資源の輸入路を断たれるリスクと向き合わねばならなくなる。

中国国内への影響と戦略的ジレンマ

中共は、国防費の増額と軍備の拡張を継続しているが、経済成長の鈍化および財政負担の増大が深刻化し、台湾封鎖が長期化し、国際社会との対立が激化すれば、中国経済と社会の安定が揺らぐことになり、また、現代戦においては情報戦、サイバー戦、経済戦の重要性が飛躍的に高まっており、軍事力の行使だけでは、台湾封鎖の目的を達成できない構造が明確だ。

結論

中共による台湾封鎖は、軍事、経済、外交の各分野において極めて高い代償を伴い、全面的な海空封鎖を継続することは現実的に困難であり、国際社会との対立激化、経済制裁、逆封鎖のリスクが常につきまとう。

中国軍も、これらの困難とリスクを十分に認識しており、実際のところ「台湾封鎖」は威嚇や圧力の手段として、位置付けられているに過ぎない。長期的かつ全面的な実施には、多くの障害が立ちはだかり、最終的に中共が台湾封鎖に踏み切れば、国際社会との全面対決と自国の経済的・軍事的損失を同時に招く結果となり、その代償は到底容認し得ない水準に達するに違いない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
沈舟