【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

パンダ誘致 茨城県が中国と友好覚書 過去には「高い買い物だよ」の声も

2025/04/23
更新: 2025/04/23

茨城県は4月21日、中国陝西省と友好関係発展に関する覚書を締結したと発表。

大井川知事は19日に陝西省西安市で趙剛・陝西省長と覚書に署名した。

覚書締結に先立ち、茨城県の大井川知事は19日、パンダを含めた希少動物の保護・研究施設も視察。18日には陝西省経済団体の関係者と意見を交わしている。

日本全体ではパンダの頭数減少 返還相次ぐ

茨城県が今回新たに覚書を締結したが、近年日本から複数のパンダを中国へ相次いで返還しており、日本に滞在しているパンダの頭数は減少している。

2023年以降、日本に滞在していた複数のジャイアントパンダが中国に返還され、大きな注目を集めた。これはすべて、日中間で交わしている「パンダ貸与協定」に基づくものであり、パンダの所有権は常に中国側にあるという前提に基づいている。

2023年2月、和歌山県のアドベンチャーワールドで長年親しまれてきたオスの「永明(えいめい)」と、その双子の娘「桜浜(おうひん)」「桃浜(とうひん)」を中国へ返還した。永明は保全および日中共同繁殖研究のため、桜浜と桃浜は性成熟の年齢に達し繁殖のために中国に返還された。

また、その前日には、東京・上野動物園で2017年に生まれたメスの「シャンシャン」も返還された。日本で生まれたパンダであっても、所有権は中国にあるため、一定の年齢になると中国へ戻すことが協定で定められている。シャンシャンの返還は、新型コロナウイルスの影響で5度にわたり延期され、2023年に返還が実現した。

昨年には、同じく上野動物園に滞在していたオスの「リーリー」とメスの「シンシン」も、健康上の理由と高齢を考慮して中国へ返還された。これら一連の返還により、日本国内で見られるパンダの数は大きく減少した。

現在、日本国内に残っているジャイアントパンダは、上野動物園の「シャオシャオ」と「レイレイ」、和歌山県のアドベンチャーワールドの「良浜」「結浜」「彩浜」「楓浜」など数頭に限られている。

「パンダ外交」の陰にある重荷 高額なレンタル料と返還の現実

中国共産党(中共)政権は、1957~82年、9か国に計23頭のパンダを寄贈していた。

1982年以降は、野生パンダが絶滅の危機に陥っていることを理由に贈与を中止し、有償貸与が始まった。パンダは10年間の「共同研究」のために貸与国に滞在し、貸与国は年間1億円以上のレンタル料を支払う。

しかし、その多額なレンタル料から貸与に渋りを見せることも少なくない。2008年、当時の東京・石原都知事は「高い買い物だ」と貸し受けに難色を示し、英メディアも「パンダの飼育には英国人の血税が大量に使われる」とパンダ不要論を展開していた。

また中共政権の「ソフトパワー戦略」として利用されていると指摘されるほか、各国の対中関係の悪化を背景に、パンダ外交はぐらつきを見せていた。

フィンランド、高額な飼育費で赤字膨らむ

昨年1月下旬、フィンランド中部のアータリ動物園は、2頭のジャイアントパンダ、ルミとピュリュを2024年11月に中国へ返還する方針を発表した。これは当初の15年間の貸与契約を8年早めて終了するかたちとなる。

2頭は2017年、中共党首の習近平がフィンランドを国賓訪問した際に締結された契約に基づき、2018年1月にアータリ動物園に貸与された。動物園はパンダ効果による観光収益を期待していたが、新型コロナウイルスのパンデミックや物価高騰の影響で来園者数が激減し、経済的に大きな打撃を受けた。

年間の飼育費は約150万ユーロ(約2億4千万円)にのぼり、中国への保護費用のほか、主食の竹をオランダから輸入する費用も含まれている。フィンランド政府は2021年に一時的な支援として20万ユーロ(約2800万円)を支給したが、2023年に出された500万ユーロの追加支援要請は却下された。

英国、繁殖失敗と契約終了で返還へ

同様の事情は英国でも見られる。スコットランドのエディンバラ動物園は、2023年12月初旬にパンダ2頭、ヤン・グァンとティアン・ティアンを中国に返還した。

2頭は2011年12月に来園し、当初10年間の貸与契約の下、年間75万ポンド(約1億2千万円)のレンタル料が支払われていた。契約はパンデミックの影響で2021年から2年間延長された。

2頭は自然交配を行わず、8回にわたる人工授精も妊娠に至らなかった。後にヤン・グァンは精巣がんを発症し、手術の末に去勢されている。

米国、パンダの突然死と国際関係の波紋

アメリカでもパンダ外交に陰りが見られた。テネシー州メンフィス動物園は、2023年4月、2頭のパンダヤーヤーとルールーを中国に返還した。2頭は20年間の契約で滞在していたが、契約満了とともに返還された。

しかし、その直前の2023年2月1日、ルールーが睡眠中に突然死。享年は24歳だった。中国のネットユーザーや一部メディアは、飼育環境に問題があったのではないかと米国側を批判。米中関係が緊張する中、象徴的な出来事として注目された。

中国から派遣された専門家チームによる調査では、死因は心臓発作の可能性が高いとされた。一方で、ヤーヤーは皮膚病による脱毛が見られたものの、食欲と体重は安定していると診断された。