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ウォール街の専門家たちは驚愕 米国経済データは崩壊しなかった

2025/04/24
更新: 2025/04/24

米国経済の崩壊を予測する意見も存在するが、最新の経済データは堅調な動きを示していた。本稿では、ドルとユーロの今後の展望、アメリカ経済指標、世界通貨体制の変化、そして為替市場におけるリスクを、最新ニュースと専門家の分析に基づいて解説する。

ユーロはドルに取って代われるか

ドルについては、極端な主張が複数存在する。一部では、ユーロがドルの地位を奪うとする見方や、世界通貨体制が金本位制へ回帰するという主張もあった。

4月21日、フランスのマクロン大統領は、「ユーロがドルに代わって世界通貨の役割を果たすだろう」と述べ、22日には、欧州中央銀行の副総裁ギンドスも、「現時点では準備通貨の代替となる条件は整っていないが、今後数年でその役割に最も近づく存在になるだろう」と語った。「統合が進むことで、ユーロの国際的影響力は、さらに高まると信じている」とも述べた。

加えて、国際通貨の多元化が進行しており、「ドル+N」という新たな通貨体制の形成が進んでいるとの見方も出た。

中国の経済学者であり西京研究院院長の趙建は、次のように指摘する。「アメリカのトランプ大統領が貿易戦争を開始し、デカップリングとサプライチェーンの分断が進行した結果、ドルは『貿易の錨』という役割を失った。これはまさに自滅的な行為であり、未来の破壊につながりかねない。仮に、米中が完全にデカップリングすれば、ドルを保有しても中国から安価で高品質な商品を入手できるとは限らない」

しかし、これらの見解には同意できない。理由は明確である。

第一に、国際金融市場に広がる不安定さは、一時的な感情の産物であり、投資家はドルの代替より安定した通貨を求めて金やユーロに資金を移動させているだけにすぎない。

だが、世界の基軸通貨としての地位を確立するには、長期的な信頼の蓄積、広範なグローバル展開、そして強固な経済基盤が不可欠である。

現在のヨーロッパは、関税戦争でアメリカに押され、中国製品による市場圧迫にも直面して、加えて、左傾化が進んだ結果、イノベーションの停滞が生じ、将来的なAI競争において不利な立場に追い込まれつつあった。

このような状況下で、ヨーロッパ経済が短期間で回復する可能性は低く、ユーロの上昇は一時的な現象にとどまり、長期的な価値の維持は難しいと考える。

注目すべきは、アメリカが脱グローバル化を進めているのではなく、グローバルなサプライチェーンの再構築に取り組んでいる点である。信頼に値しない中国共産党の供給網を排除し、メキシコ、ベトナム、インドといった国々への移行を図っている。

最新の報道によれば、副大統領ヴァンスは4月22日、インドとの貿易交渉において、基本合意を得たと発表した。今後10年で二国間貿易額を5千億ドルに倍増させる計画であり、この合意によってアメリカは1300億〜1800億ドルの輸出増加と、50万〜100万の新規雇用創出を見込むと言う。

さらに、インドは、中国共産党が報復措置として受領を拒否したボーイング社の航空機を引き受けた。これにより、ボーイングは中国側の影響を回避する形となった。

同時期に、ベトナム、シンガポール、韓国、カンボジアも動きを強め、原産地偽装や転送貿易の違反に対して、厳しい取り締まりを実施。これらの動きは、明らかに中国メーカーをターゲットとした。

このように、アメリカ主導のグローバル経済体制は変質したものの、完全に終焉を迎えたわけではない。中国共産党の影響力が低下した結果、ドルを保有しても、中国製の安価な商品に頼ることは難しくなるかもしれないが、他国から代替となる安価な製品が供給される可能性は、十分に残された。

ウォール街の専門家たちは驚愕:アメリカの経済データは崩壊しなかった

当然ながら、今後ドルの価値を支える最重要要素は、アメリカ経済そのものである。この点において、最新のニュースは経済学者の予測を大きく覆す内容となった。

2024年4月20日、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は注目すべき記事を掲載した。タイトルは「経済データ以外、トランプはどこにでもいる」という記事の冒頭では、「ニュースやSNSに無関心で、経済データのみを通じて世界を観察してみてほしい。1月にホワイトハウスの主が交代したことなど、到底想像できないだろう」と述べている。

この論考では、トランプ大統領による違法移民の強制送還政策、関税措置、連邦職員の削減と資金停止といった施策が連日報道の中心にありながら、実際の経済への影響は、極めて限定的であるとの指摘だ。雇用、消費支出、インフレといった指標は、バイデン政権時代と大差なく、この現象は不可解と言えた。ユナイテッド航空は、現在の経済環境を「予測不可能」と表現し、先週にはリセッション(景気後退)有りと無しの2通りの収益見通しを公表した。

企業が現状を理解できていないように、経済学者たちの予測も外れた。4月初頭の『ウォール・ストリート・ジャーナル』による調査では、多くの経済学者が、アメリカ経済のリセッション入りを懸念しており、今年は、雇用の大幅な減速とインフレの急騰が起きると見た。

しかし、現時点でそれを裏付けるデータは乏しく、過去2か月間の雇用は平均で17万3千件の増加を記録し、これは直前の6か月間とほぼ同等の水準である。失業率は、平均4.2%であり、前期と比較して0.1ポイントの上昇にとどまっていた。

同時に、全体のインフレ率とFRBが注視するコア指標の双方が、平均して0.1ポイント低下した。先週発表された3月の消費者物価指数(CPI)は前年比で2.4%の上昇にとどまり、事前予想の2.5%や前月の2.8%を下回った。コアCPIも前年比2.8%上昇となり、予測の3.0%や前月の3.1%を下回った。すなわち、インフレ率は、さらなる鈍化傾向を示したのだ。

経済学者たちが予測を誤った要因について、筆者は複数の理由を提示した。ただし、私の見解では、それらの中には妥当なものもあれば、そうでないものも含まれている。以下に私の分析を示す。

1.ニュースの見出しと実際の経済データとの乖離には、時間的な遅れが一因と考えられる。この見方には一定の根拠があるが、例えば原油価格の下落は現実であり、時間の経過とともに経済成長を後押しする要素となる。

2.多くの輸入業者が、関税発動前に大量の在庫を確保しているため、新たな関税が最終消費者に波及するまでには一定の時間がかかる。この点は正確である。

3.一部の連邦職員は退職を延期しており、9月まで給与リストに残る可能性がある。この現象も部分的には正しいが、より重要なのは、労働市場の堅調さによって、多くの元職員が既に再就職していることである。2月末から3月初頭にかけて、元連邦職員による失業保険申請は、一時的に増加したが、現在は週平均で昨年同時期をわずかに上回る水準にとどまっている。したがって、解雇の経済的影響は限定的であり、消費が引き続き成長を支えている。

4.連邦支出の安定も事実である。イーロン・マスク氏は、かつて2兆ドル規模の連邦支出削減が可能と述べたが、彼が率いる政府効率化省(DOGE)は現在、1550億ドルの節減を達成したと主張している。だが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』の調査によれば、トランプ政権発足から80日間で、連邦支出は前年同期比で1540億ドル増加している。

5.さらに重要なのは、多くの経済学者が企業の適応力と労働市場の強靱さを過小評価している点である。数日前には、グレッグ・マンキュー氏をはじめとする著名な米国経済学者やノーベル賞受賞者ら1千人以上が「反関税宣言」に署名し、トランプ氏の関税政策が誤った方向に経済を導くと警告を発した。2024年4月21日時点で、この宣言には1383件の署名が集まったが、しかし、私はこうした専門家の共同声明に特段の関心を抱いていない。なぜなら、トランプ氏の第1期目においても、同様の懸念が『ニューヨーク・タイムズ』紙を通じて広まり、ノーベル賞受賞者らがアメリカ経済の崩壊を予測したにもかかわらず、実際にはアメリカ経済が着実に成長したからである。

無論、現在のアメリカ経済に課題が存在しないわけではない。高金利は、経済活動の重荷となり、企業や消費者の住宅購入意欲を抑制し、連邦政府による国債支出も増加傾向にある。2025年には9兆ドルの国債が償還期を迎え、新たな債券発行による借り換えが求められ、この点が、トランプ氏がパウエルFRB議長に圧力をかけた理由の一つと考えられる。

今後、経済の軟着陸が実現するかどうかは、関税交渉の行方、FRBの政策判断、企業の適応力、そして消費者の信頼感にかかっている。ただし、原油や食品の価格下落により、アメリカ国内でのインフレ加速は考えにくい。加えて、各国が、中国の急成長に歯止めをかけようとする動きを強めているため、中国が他の主要経済圏と連携して世界経済に大混乱を招く可能性も低いと判断される。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
秦鵬
時事評論家。自身の動画番組「秦鵬政経観察」で国際情勢、米中の政治・経済分野を解説。中国清華大学MBA取得。長年、企業コンサルタントを務めた。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)、新唐人テレビ(NTD)などにも評論家として出演。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。