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デフレは中国経済衰退の根本的な兆候であり その一因でもある

2025/04/24
更新: 2025/04/24

中国では、デフレの圧力が一段と強まっているようだ。

北京の計画立案者によって、過剰に建設された工場は、国内外の需要を大きく上回る製品を生産し続けている。民間企業も国有企業も、膨れ上がった在庫をさばくために値下げを繰り返し、その結果として利益率が悪化した。

このような価格下落が長期化したことで、消費者の間には「いずれ値下げされる」という期待が根付き始め、このデフレ心理が定着すれば、それ自体が経済活動にブレーキをかける要因となり、どのように統計を読み解いても、明るい兆しはほぼ無い。消費者物価指数(CPI)がかろうじて下がっていないのは、サービス分野の価格が底堅く推移しているためだが、それでも物価全体の上昇は、ほとんど感じられないという。北京市統計局の最新データによれば、2024年2月のCPIは、前年同月比でほぼ横ばいだった。

一方、生産者物価指数(PPI)、いわゆる工場出荷価格は、2025年3月に前年同月比で2.5%下落し、2022年10月以降、下落が続き、さらに、経済全体の価格動向を示すGDPデフレーターは、6四半期連続でマイナスを記録した。

この深刻なデフレ圧力の背景には、少なくとも3つの構造的な要因が存在している。

最大の要因は、ここ数年にわたる輸出成長の著しい鈍化である。トランプ大統領による対中関税政策が中国経済の足かせとなったのは確かだが、関税は、問題の一部に過ぎない。

バイデン前政権も、選挙中には2018年・2019年のトランプ関税を批判していたものの、政権発足後はそれらを維持し、さらに中国製電気自動車(EV)や部品、バッテリーに対して100%の追加関税を導入した。欧州連合(EU)もまた、中国製EVに関税を課した。

もっとも、輸出の低迷は、西側諸国の政策だけが原因ではない。中国政府のゼロコロナ政策がパンデミック後も長期間継続されたことで、生産と物流に深刻な支障が生じ、海外のバイヤーは、サプライチェーンの脱中国を加速させた。

最近、一部では中国の輸出が急増していると報じられているが、これを景気回復の兆しと捉えるのは早計だ。実際には、関税発動前に安価な在庫を確保しようとするバイヤーの駆け込み需要が主因であり、むしろ長期的には、供給先の分散が進んだことを意味し、逆風となって、中国の輸出には重い抵抗になるだろう。

外需の減退に加え、内需の弱さもデフレ圧力の重要な要素だ。その背景には、中国の長期にわたる不動産危機がある。不動産開発業者の相次ぐ経営破綻により、建設セクターの成長が鈍化しただけでなく、不動産価格の下落によって数百万世帯の純資産が目減りし、個人消費にも深刻な影響が及んだ。

多くの中国人が、家計資産の再建を優先して、貯蓄に励む一方で、消費には極めて消極的であり、このため、工場で安定して生産された製品が、小売店の棚に滞留する事態が続き、さらに、2023年には、北京が誤った政策判断を下した。輸出の弱さを補おうと、当局は公共資金を投入して特定産業の生産能力を拡大し、国内需要の喚起を図った。支援対象はテクノロジー、EV、バイオメディカルといった「未来産業」だったが、結果的に、国内外の需要を伴わない過剰生産を招いただけだった。

しかも、こうした生産能力の多くは、稼働を始めたばかりであり、今後数四半期にわたって在庫処分のための値下げが続く可能性が高く、デフレ圧力はさらに強まるだろう。

この状況には、より根源的な危うさも潜んでいる。もし国内外のバイヤーが値下がりを「当然」と受け止めるようになれば、「明日にはもっと安くなる」という期待が広がり、消費や発注が先送りされるようになる。このような心理の連鎖が需要を冷え込ませ、さらに価格を押し下げ、まさに自己実現的な予言のように、デフレが加速する危険があるだろう。

これは1990年代から2000年代にかけて、日本で実際に起きた現象であり、経済の持続的回復を著しく困難にした。

現在、北京は経済の再建に苦戦しており、これ以上の新たな課題を抱える余裕はない。しかし、現実はすでにその一線を越えてしまったように見える。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。