中国の「四大奇書」の一つで、昔から多くの人に愛されてきた小説「水滸伝(すいこでん)」では、腐敗官僚に立ち向かった庶民が英雄視されたように、官民の対立が日に日に激しさを増す現在中国でも「搾取に対抗する新たな義士」の登場を予感させる状況が生まれつつある。
4月22日夜、広西省南寧市の路上で果物を販売する露天商たちが、彼らの三輪車を強引に押収しようとした治安要員(「城管※」や公安)に対して一致団結し、抗議の声を上げた。

商品の展示台であり移動手段でもある三輪車を押収されたことに激昂した露天商たちは、次々と当局者の前に立ちはだかった。
身体を張って三輪車を守る者もいれば、果物や段ボールを当局者らに投げつけて反抗し、「土匪(どひ・教養がなく暴力で物を奪う無法者)め!」などと大声で罵る者もいた。
怒号と罵声が飛び交う現場には、火薬の臭いが立ちこめたかのような緊張感が広がった。
最終的に、露天商陣営の反抗の勢いに、圧倒された城管たちは、一度は「没収」した彼らの車両をその場に置いたまま撤退し、この日に予定されていた「三輪車没収行動」は終了となった。
当局者らの去っていく様子に、露天商たちは「無法者どもが退散したぞ!」と歓声を上げ、みんなで拍手し勝ちとった勝利を喜んだ。

露天商たちの「勝利」はSNSでも拡散され、大きな話題となった。
関連トピックスには「民衆側の勝利!」や「よくやった!」といった拍手喝采の声があふれた。
今回のような「勝利」を積み重ねていくことは、民衆側の自信にもつながりそうだ。「秩序維持」の名のもとに行われる強権的な取締りに、民衆の反発は、今後一層広がっていくだろう。
(当時の様子、城管vs露天商の戦い、2025年4月22日夜、広西省南寧市)
市民の怒りが向かう先
※「城管」とは、「城市(都市)管理総合行政執法局職員」の略称で、中国の都市部で、無許可の露天商や違法駐車の取り締まりを担う治安要員のこと。
日本で言えば、路上喫煙の見回り員や交通指導員に近い立場だが、その実態はまるで別物だ。
屈強な男性ばかりで構成される城管の中には「チンピラ崩れ」のような人物もおり、時に市民に対して、暴行を加える様子が動画でネットに出回るほどだ。
彼らの暴力的な取り締まりぶりから、中国のSNSでは「中国最強のファイターは城管」と冗談交じりに語られることもある。
(高齢の路上販売者を殴打する城管)
城管の問題は暴力だけではない。安い給与に対して、広範な執行権限を持つため、腐敗や不正の温床ともなり、「取り締まり」と称して罰金を要求したり、「没収」した露店の商品を私的に流用したりする行為が日常化しており、「現代の土匪(トゥーフェイ・中国語の罵り言葉、意:無法者)」という「蔑称」が定着している。
実際、湖南省ではスイカを売っていた農民が、城管による不当な罰金請求に抗議した後に暴行され、死亡するという痛ましい事件も発生した。この一件で、数千人の市民が抗議に集まる騒動に発展し、政府側は武装警察を投入して強制排除に踏み切った。
過去には山東省青島市の軍隊と衝突を起こした際に、城管側が勝利したという異常な事件も起きている。
こうした暴力城管による横暴な取り締まりには、露天商をはじめ、市民の反感も高く、市民と城管との衝突は、後を絶たず、社会不安の火種なのだ。
(中国の「城管」に、売り物のスイカを投げつけて反撃する路上販売者たち)
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