4月26日夜、アメリカ・ワシントンのヒルトンホテルで、ホワイトハウス記者協会(WHCA)の毎年恒例の晩餐会が開催された。トランプ大統領が1期目に続き欠席し、予定されていたコメディパフォーマンスがキャンセルされたため、今年の晩餐会の雰囲気は例年に比べて冷え込んだ。
協会の主席であるユージン・ダニエルズ(Eugene Daniels)氏は、スピーチの中で今年の晩餐会が「何かが違う」と、その感覚をと指摘した。トランプ大統領が欠席したことに加え、主催者は、伝統的な晩餐会のメインショーをキャンセルした。
当初、政治的に左寄りのコメディアン、アンバー・ラフィン(Amber Ruffin)氏が、パフォーマンスゲストを務める予定であったが、ホワイトハウス記者協会は、最終的にパフォーマンスの計画をキャンセルし、不必要な政治的論争を避けたのだという。
ダニエルズ氏は、発言の中で、記者の使命は「全ての市民に奉仕することであり、どの政党や政治家とも結びつくことではない」と強調した。また「私たちは反対派でもなく、国家の敵でもない」と述べた。
直接的に名前を挙げてはいないが、ダニエルズ氏の発言は、トランプ大統領が過去に主流メディアを「人民の敵」と呼んだ批判に対する反応として広く解釈されている。トランプ政権の間、ダニエルズ氏は、主流メディアの報道が不正確であり、社会的信頼を損なうものであったと何度も明言した。
ハーバード・ケネディスクールのメディア政治公共政策研究センターの調査によると、2017年にトランプ氏が就任してからの100日間で、アメリカの主流メディアによるトランプ氏のネガティブな報道の割合が80%を超えた。長年にわたり、メディアは「危険」、「嘘」、「扇動」、「国を分裂させる」といったレッテルをトランプ氏に貼り、また社説を通じてネガティブな感情を拡大し続けた。
トランプ氏の欠席は、2017年以降彼がこの晩餐会に参加しないという慣例を継続している。報道によれば、彼はその晩、イタリアのローマで教皇フランシス(Pope Francis)の葬儀に出席しており、トランプ政権の他の官僚も、今回の晩餐会には出席していなかった。
晩餐会で、Axiosの記者アレックス・トンプソン(Alex Thompson)氏が、前大統領ジョー・バイデン(Joe Biden)氏の健康状態に関する報道でアルド・ベックマン賞(Aldo Beckman Award)を受賞した。
トンプソン氏はスピーチの中で、メディアがバイデン氏の健康問題に関して報道の不備があったことを認め、これが公衆のメディアへの信頼を低下させたと述べた。また「私自身も含めて、私たちは多くの重要な情報を見逃した。そのため、一部の人々が、私たちに対する信頼を失ったのだ」と語った。トンプソン氏は「誤りを認めることが、信頼を再び築くことにつながるが、誤りを弁護することは、それをさらに弱めるだけだ」と強調し、会場は拍手で応えた。
さまざまな分野の記者に加え、晩餐会には俳優ジェイソン・アイザックス(Jason Isaacs)氏、ティム・デイリー(Tim Daly)氏、『ワンダーウーマン』の主演リンダ・カーター(Lynda Carter)氏など、多くのエンターテインメント界の著名人も参加した。政治界からは、前下院議長ポール・ライアン(Paul Ryan)氏や前ホワイトハウス副報道官ホーガン・ギドリー(Hogan Gidley)氏などの共和党関係者も出席した。
ホワイトハウス記者協会(White House Correspondents’ Association, WHCA)は1914年に設立され、ホワイトハウスに駐在する記者の取材権と報道の自由を守ることに尽力し、毎年記者晩餐会を主催して、優れた報道活動を表彰し、奨学金基金を募っている。
今年2月、トランプ政権は、ホワイトハウス記者会見の座席配置と出席資格の管理権をWHCAから取り上げ、ホワイトハウス内部が直接管理することにした。この措置は議論を呼び、メディアの公平な取材機会を弱めると見なされたが、支持者たちは、この措置が主流メディアの独占を打破し、より多様な声がホワイトハウスに入ることを促進すると、考えたという。
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