チベット特集 自由のない地

「チベット文化は風前のともしび」中国共産党による民族同化政策で

2017/07/04
更新: 2017/07/04

「中国で最も幸せな都市」、これは中国共産党政権がチベット自治区の首都・ラサを形容する時の決まり文句だ。だが亡命チベット人のサーンチーさんに言わせると、ラサほど不幸で、自由を束縛された都市はない。彼女はラサに暮らすチベット人を、「籠の鳥」と表現している。

チベット亡命政府台湾代表部事務所のダワ・ツェリン氏は大紀元の取材に対し、中国共産党政権はチベット文化とチベット仏教の弾圧政策を取り続けているが、その最終的な目的は、チベット民族の漢族への同化(民族同化)及びチベット民族の消滅だと語っている。同氏は、現行の統治下ではチベット人に真の幸福と自由がもたらされることなどあり得ないと考えている。

亡命チベット人の里帰り

サーンチーさんは、チベット亡命政府の拠点である、リトル・ラサとも呼ばれるインド北部のダラムサラに住む亡命チベット人だ。昨年末、親族訪問ビザを取得して、チベット自治区への帰郷を果たすことができた。チベットでは、首都ラサや青海省内にチベット佛教の聖地を訪ね歩いたが、滞在中に当局から執拗な干渉を受けたという。インドに戻ったサーンチーさんはメディアに対し、この間に体験したことを詳細に語った。

ラジオ・フリージアの報道によると、サーンチーさん一行の旅の目的はチベット在住の血縁者を尋ねチベット佛教の寺院を訪ねることだった。渡航に当たっては中国大使館で発給されたビザ等の正式な書類がすべて揃えているにもかかわらず、国境を超える際には、警察職員に別室へ連れて行かれ、携帯電話と手荷物が全部検査された。数珠やお守りといった全ての宗教関連物は携帯することが許されず、見つかったものは没収された。

サーンチーさんたちがラサで、地元警察に指定された旅館に宿泊しなければならなかった。青海省に到着すると、まず地元公安局に連れていかれ、血液検査を済ませると、犯罪者のように正面と側面の写真を撮影された。警察はサーンチーさんらに対し、青海省内から出てはならず、その必要がある場合は関連部門の許可を得なければならないと告げた。

ラサ市内の様子について、サーンチーさんは「各寺院の内外、道路や路地口など、あらゆるところに監視カメラが設置されていて、パトロール中の軍隊をよく見かけた」と語っている。外部からやってきた僧侶がラサ市内の旅館に宿泊する際には、身分証のほかにも関連事務局と派出所から発給された証明書が必要となる。ラサに住むチベット人や外部からのチベット人たちは、何をするにも何を話すにも常におびえており、政治的に敏感な話題には決して触れない。サーンチーさんはそんなチベット人を「籠の鳥」だと語り、やるせなさを隠せない。

共産党の部隊に「お茶のお誘い」で行方不明

青海省玉樹チベット族自治州で2015年7月、伝統の行事に臨むチベット族たち。チベットの文化は中国共産党の圧力で風前の灯火(Kevin Frayer/Getty Images)
 

サーンチーさんはさらに、インドで学校を卒業して帰郷したチベット人が置かれている現状についても語った。彼らはチベットに帰郷後、誰もが何らかの問題を抱えており、国保(国内安全保衛支隊)から、お茶やコーヒーに「誘われる」ことを非常に恐れている。いったん彼らの「招待」を受けたら、ただでは済まされないからだ。ひどい暴行を加えられたものもいるが、それ以降、安否すら不明のままのチベット人もいる。そのため、サーンチーさんが帰郷したことを知っても、誰も尋ねてはこなかった。当局から目を付けられ、仕事を失う危険性があるからだ。たまたま、学生時代の友人らに出会ったが、みな涙を浮かべて「インドが懐かしい」「チベットでは何の自由もない」と声を詰まらせた。

サーンチーさんは、ラサに住む若年層のチベット人が日常的に中国語を使い、チベット語を使用する頻度が極端に少なくなっていることを挙げ、漢民族への同化が、チベットのその他の地域よりも進んでいると憂慮している。また、日中から酒におぼれ、勉強もろくにしない若年層が多いことにも触れ、チベット人がこうして堕落してゆくことこそが、中国当局の望んでいることだとも語っている。

現在の青海省には確たる収入源がない。そのため、働ける住民はいずれも出稼ぎに行くようになった。その結果、残される老いた父母を老人施設に入れるケースが徐々に増加している。こうした状況は、以前のチベットなら考えられなかったことだ。

中国共産党政権によるチベット民族・チベット文化撲滅政策

ダワ・ツェリン氏は大紀元の取材に対し、共産党政権がチベットに対する高圧的な政策を一貫して崩さないのは、民族同化を進め、チベット民族を地上から消滅させることを目的としているからだと語っている。そのためには、中国当局はチベット仏教を潰し、チベット語教育をやめさせる必要がある。つまり、現在のチベットが抱える最大の問題は、人権でも、民主主義でも、自由でもなく、チベット仏教とチベット語が風前の灯火にあることなのだと説明している。

「チベット人が独自の信仰を持ち、独自の文化や言語を維持するだけで、共産党政権は不安に駆られる。そのため当局は手段を講じてチベットの仏教、文化、言語を漢民族に同化させようとしている。当然、こうした政策はチベット人からの強い抵抗に遭うため、チベットでは常に、さまざまな問題が浮上している」

共産党政権のチベット弾圧政策に対し、この8年間で合計155人ものチベット人が、抗議の焼死を遂げた。だが、チベット政策に変化の兆しはない。「中国当局とチベット側との衝突はこれからも続いてゆくだろう。ある民族の宗教や文化が消滅させられようとしている。これは決して容認できない問題なのだから」

最後に同氏は、「中国共産党政権の統治下では、幸せに生きられるかどうかではなく、生きてゆけるかどうかが最大の焦点だ」と語り、チベット人が、生きるか死ぬかのギリギリの状態に置かれていることを表現した。

(翻訳編集・島津彰浩)