中国では、交通事故などで救助が必要な人を目撃したとしても、助けずに見過ごす人は多い。10数年前、路上で転倒した高齢者を救助し、病院に運んだ男性が、いわれのない「加害者」レッテルを貼られてしまい、裁判で争うが救助者が敗訴するという奇妙な事例がある。救助者は75万円相当の医療費支払いを命じられ、この不合理さは中国社会に衝撃を与えた。
この判決事例以後、「事故に遭った人を助けない」が定説と化し、「見殺し」ともいえる出来事はしばしば発生している。
道路に設置された監視カメラの映像によると、2017年4月21日夕方、河南省駐馬店市内の大通りで、タクシーが女性をはね、そのまま走り去った。まだ意識のある女性は一度、頭をあげて周りに目線を向けたが、そばを通り過ごした20数人は誰も彼女を助けなかった。さらに、一台の乗用車が彼女の上を通過し、女性は「二度轢き」に遭った。
2011年にも同様の出来後が起きており、「見殺し」の犠牲者は2歳児だった。公開された監視カメラの映像によると2011年10月、広東省佛山市内で当時2歳の悦悦ちゃんは、同じワゴン車に二度轢かれた。この「二度轢き」は、被害者が生存していて入院すると、高額な賠償金を請求されることから、2度轢いて死亡させるという劣悪犯罪だ。悦悦ちゃんは、数分後に別の軽貨物車にはねられた。
参考:「二度轢きはやめて」と命乞い タンクローリーとの衝突事故で=河南省
現場を通り過ごした18人は倒れた2歳児を無視した。19人目の通行人は、廃品拾いで生計をたてる貧困層の女性だった。8日後に幼い命は病院で息を引き取った。監視カメラの映像がインターネットで公開された。
「人を助けるには高いリスクがつく」との説が定説と化している。ひき逃げに遭った被害者は怒りを救助者にぶつけ、「加害者だ」とゆすり、多額の金銭を請求したりする。賠償金を狙った詐欺もある。
2006年、南京市の路上で、ある年配の女性が転倒し負傷したのを見て、通行人の男性は彼女を病院に連れていった。男性はのちに、女性を転倒させたとして女性とその家族に裁判を起こされ、敗訴した。およそ4.6万元(約75万円)の治療費を負担する判決を言い渡された。判決をめぐって中国全土で熱い議論が巻き起こった。
この出来事は中国人の道徳を50年後退させたといわれている。
(翻訳編集・叶清)
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