「中国では、人命はとても安い。臓器のほうが高い値段がつけられているのだからー」沈痛な面持ちで、元医師は語った。中国の臓器移植ビジネスと中国共産党のプロパガンダに詳しい元外科医エンヴァー・トフティ氏が、このたび来日し、14日は広島、16日には東京でそれぞれ中国臓器移植関連イベントで講演した。
新疆ウイグル自治区の病院に勤めていた元外科医トフティ氏は1995年、中国の処刑場で、生存していた人物から臓器を摘出した経験を持つ。のちに、中国共産党主導の計画的な大量殺人の可能性が疑われる「臓器狩り」問題の初期の体験者として、各国議会などに招へいされ、証言している。トフティ氏はクリスチャンであり、証言は犠牲者への贖い(あがない・賠償の古語で罪を償う)と認識しているという。
中国当局は「2020年までに世界トップの臓器移植大国になる」と主張しているにもかかわらず、大量の臓器がどこからくるのか、ドナーが誰なのかなどをいまだに明らかにしていない。通常は数カ月~数年の臓器移植までの待機時間が、中国では最短で「数時間」という医学的にありえない環境にある。複数の国際機関の調査により、中国は生きたままの人からいつでも臓器を摘出できる臓器バンクがある、と指摘している。
ウイグル自治区の空港、床案内ルート
トフティ氏は16日、東京都新宿区で開かれた、日本の臓器移植関連法の整備を求める「臓器移植を考える会(仮題)」(発起人・加瀬英明氏)の勉強会で、「臓器狩り」がいまもなお行われていると述べた。
新疆ウイグル自治区カシュガル空港で、今年10月までに撮影された写真には、中国語とウイグル語で「特殊旅客、人体器官運輸通路」との優先通路の床案内ルートが設けられていることを紹介。「この画像がフェイクであると指摘する人もいる。私も嘘であってほしいと願っているぐらいだ。なぜなら、空港に案内が設置されるほど、運ばれる臓器が多いということなのだから」と、トフティ氏は述べた。
中国共産党は2016年5月、中国民間航空会社に対して、「臓器の空輸」ルートを確立させるよう要求した。最近の国内報道では、南方航空は1年で500件以上を空輸したと報じた。専門家は、「これまでの人民軍の航空機ではなく民間機にまで臓器の空輸が展開されるのは、臓器移植件数の増加と、いまだに豊富な臓器供給源をもっていることを示唆している」と分析する。
共産党の洗脳で、囚人からの臓器摘出は「良いこと」
トフティ氏は、臓器狩りに関与した医師として、背景にある善悪判断をゆがませる共産党の宣伝と洗脳について語った。「共産党政権下で生まれ育ったら、人々は中国共産党、共産主義だけが素晴らしい、他は悪くて『人民の敵』だと刷り込まれてしまう。つまり、国のために敵を除外することは(愛国心を煽動されて)国のために良いことだと信じ込ませる」
当時は若手医師だったトフティ氏。「ワイルドなことをしてみないか」と上司に唆され、処刑場に行き、まだ息のある受刑者から臓器を摘出した。当時、罪悪感など全くなかった。「悪者を懲らしめている」という自負、プライドさえあったほどだという。
中国の臓器移植問題を調べるカナダ人権弁護士デービッド・マタス氏によると、臓器狩りの犠牲者はウイグル人、チベット人、地下教会信者、政治犯、法輪功学習者で、中国国内の収監人数では最も多く、非暴力を理念とし、健康的な生活を送る法輪功学習者と推測している。
1999年7月、当時の江沢民・中国国家主席により法輪功弾圧政策がスタートした。北京に14年在住していたジャーナリズム研究者クレイブ・アンスレイ氏は論文『完全なるメディア支配』のなかで、「共産党は、法輪功に対するすさまじいヘイトキャンペーンを展開して、法輪功は非人間だとの憎悪を人々に植え付けた」と解説する。
大紀元は社説「中国共産党についての九つの論評」(略称・九評)を通じて、民族、信仰、階級など、あらゆるグループで闘争を煽動して「革命の火種」とするのは共産主義の手法と論じてきた。
トフティ氏も、新疆ウイグル自治区で民族間の緊迫感があるのは、中国政府のプロパガンダ(闘争の煽動)が原因であるとみている。現地では、政府や共産党当局に対して反発はあったものの、ウイグル人も漢民族の人も共に暮らすことができていたという。
アンスレイ氏によると「中国市民は100%死刑制度を支持している」とし、無神論の共産党政権下の中国では、罪人に対して無慈悲な対処が適当とのムードが流れる。
党のプロパガンダにより「非人間」のレッテルを貼られた、平和的な思想を持つ法輪功学習者数千万人の命は、共産党にとって「移植手術用の生きた臓器」に映っているのかもしれない。
(文・佐渡道世)
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